一か月ほど前に
都内某所(目黒区)を歩いていると急に雨が降ってきて、

3時ころだったが、昼食がまだだったので腹ごなしをかねて、
そのまま濡れながら通りのラーメン屋さんに入りました。


カウンター10人くらいの自販機支払い式の小さな店、坦々麺とビールを頼み

食券をカウンターに置いて丸椅子に座ると、海坊主(失礼)風の店主が

「傘持ってないの?」といきなり訊いてきたんです。


(なれなれしいなぁ)と内心思いつつも、「ええ」と答える私。

客はほかに誰もいない。


ビールとラーメンを味わいほんのひとときの

憩いの時間が終わり、ごちそうさまでしたと

立ち上がると、店主が使い古した傘を持ってきて

「これおいてあるやつだからいいよ」と言いました。


「で、でも、しばらく来れないからいいですよ」と

言うと、


「いいよ、あげますよ」と言ってくれた。


(じ~~~ん)


「ありがとうございます」と言って、その日はその傘をさして帰りました。



そして

昨日、約一カ月後その店に行ったのです。



傘と手土産を持ってその店に入りました。

昼の時間なので数名のお客さんがいるところ

海坊主(失礼)主人は少し忙しそうでした。


「あの、こないだ、傘お借りしたので、返しに来ました」と私。


店主はギョロっとこちらを見つめ、私を見て思い出したようす。

「ああ、あげたのに。いいのに」と。


私「いいえ、このあいだは助かりましたどうもありがとうございました」

そうして傘を渡したら彼はすぐに受け取り裏にしまいに行き、

戻ってきたところで、手土産を渡しました

「これ良かったら食べてください」


そのとき海坊主が人の良い表情で

「そんなのいいのに」と言って、少し恥ずかしそうにして

受け取ってくれました。



帰り道、とっても気持ち良い気分でした。


ああ、自分も本当は、こういう気持ちを味わいたくって

過ごしているんだな。と思ったのでした。