雪村 奇想の誕生 | アンクルコアラのブログ

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「ゆきむら」ではなく「せっそん」です。ー自虐的なキャッチコピーにはあまり感心しないが、かねてより若冲・蕭白に通じる奇想の絵師の先駆者と云われる雪村に惹かれるものを感じていた。

雪村は戦国時代の画僧であり、奇想の元祖とも云われるが、その絵画世界は後世、尾形光琳・狩野芳崖・橋本雅邦らを魅了し、多くの模写が制作されている。

15年振りの回顧展とあって、今回観ないと生きている内に観られないかも知れない。会期末まで後1週間に迫った日曜日、会場である東京芸大美術館に赴いた。
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観終って、奇想と云えばそうかも知れないが、むしろ教養深い自由人を感じさせる生き方の格好良さに感銘を受けた。

雪村は画僧ではあるが、元々佐竹氏の血筋を引く武士の出身だそうで、何故か廃嫡の憂き目に遭って出家したらしい。

しかし武士の質実剛健の気風は争えず、戦国時代の空気もあってその絵には気概が溢れている。

布袋の絵を得意としていたそうだが、確かに他の絵師の描く布袋よりもハツラツとした表情が印象的である。
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虎と戯れる鍾馗。猿猴図や猫図もそうだが、生き物に対する眼は限りなく優しい。
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尾形光琳も好んで模写した琴高仙人。光琳が描くと洒脱な風情だが、本家の方が勢いがあり、霊力が強そうである。
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私のイチオシは、重文に指定されている「風濤図」。

強い風に揺らぐ松の古木、押し寄せる波濤の中で帆を膨らませる小船の迫力ある描写は、水墨画でありながらクールベなどの西洋近代絵画を髣髴させる。
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奔放でありながら高い知性を感じさせる雪村の世界を堪能したひと時であった。



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