今日はクリスマスイブ。クリスマスにちなんだトピックスを考えたが、還暦を迎えた爺いがクリスマスでもあるまいと、普段の日同様「私の本棚」を書くことにした。
今回紹介するのは「あざむかれる知性」(村上宣寛著 ちくま新書)である。
タイトルだけ見ると、ハイデガーかサルトルの哲学書のようだが、肩の凝らないウンチク本である。
著者は心理学者で、「心理テストはウソでした」などの著書がある。本書もそのノリで、世間に流布する常識やベストセラー書のウソを暴き、メタ分析を行ったシステマティックレビューにより本当に頼れる知識を得ようと提唱する。
私のような文系人間には、メタ分析云々はチンプンカンプンだが、本書に書かれていることは概ね理解出来た(つもりだ)。
本書に槍玉に挙げられたのは、ダイエット理論、アンチエイジング理論、採用面接、幸福度測定などである。
著者に言わせれば様々なダイエットやアンチエイジングの試みは、やるだけ無駄だし、採用面接は廃止して学力検査一本で採用したほうが遙かに優秀な人材を獲得出来るし、人の幸福など測れる訳がない。
著者の指摘は納得出来るものが多い。特に肥満気味の私には、「無理にダイエットする必要はなく、むしろやや肥満気味の人の方が長生きする」との指摘には快哉を叫んだ。
様々な分野で、厖大なサンプル収集を行い、多くの人とカネを掛けて長期に亘り研究した結果が信頼出来ないものか、調べなくても推察出来る当たり前の結論しか出ない。
本書を読むと、心理学とは何なのか、人類に役に立っているのかと突っ込みたくなる。
もっともらしい理論の嘘を暴いてくれる本書の価値は認めなければなるまい。
ただ、著者が指摘することくらいは一般読者もある程度分かっているのはないか。著者には、読者が分かっていてもなおベストセラー書を買う、その心理を明らかにして頂きたいと思った。
また終章のメタ分析についての説明、一般読者がメタ分析を理解出来ないことを危惧して設けた章なのだろうが、それすら私には全く理解出来なかった。
iPhoneからの投稿