製作費25億円が話題の作品です。
1952年から1970年までアメリカ統治下の沖縄を舞台にしたドラマで、
米軍と米軍兵による実際の米軍機墜落、犯罪、事故を織り込んで、
沖縄の苦悩を根底にした社会派サスペンスとなっていました。
地元の若者たちの間から英雄視されるオン(永山瑛太)をリーダーにした集団が
米軍基地の物資を奪い、地元の人たちに売ったり配ったりします。
この”戦果アギャー”と呼ばれる行為も、
当時はかなり起きていたようです。
ある時、米軍基地に押し入って物資を奪ったオンたちは、
米軍に追跡・攻撃され、
その日からオンは行方不明となってしまいました。
それから年月が経ち、オンの幼馴染グスク(妻夫木聡)は刑事となり、
グスクの妹でオンの恋人だったヤマコ(広瀬すず)は小学校教師を目指し、
逮捕されて刑期を終え出所したオンの弟レイ(窪田正孝)はヤクザとなり、
それぞれオンの行方を捜し続けています。
グスクは、彼に理解を示す米軍捜査官アーヴィンの力もあって、
多くの米兵を検挙しますが、
結局はMPに連れ去られてしまい相応な刑罰が課されることはまれでした。
教師となったヤマコが教鞭をとる小学校に米軍機が墜落して多数の死傷者を出した事故でも、
十分と言える補償はされません。
グスクの、そして民衆の米軍に対する不満はつのり続けていきます。
当時のコザの町を再現したセットや小道具、
クライマックスのコザ暴動のスケール感とエキストラの多さは、
さすがに高予算をつぎ込んだだけあって迫力ある映像となっていました。
ただ、この描写に力を注ぎすぎた反動か、
メインとなるはずのオン失踪事件に関する展開が、
やや散漫になってしまったように感じました。
レイをめぐるコザと那覇のヤクザたちの人脈もあまり理解できなかったです。
クライマックスにレイが米軍に突きつける要求が、
グスクでなくても笑ってしまいそうな脱力系なのも、
映画の持つ大作感には合っていない気がしました。
また、生まれて間もない新生児を過酷な環境で、どうやって育てることができたのかについても違和感を覚えます。
例えば島で働く女たちに赤ん坊が可愛がられているといった場面がワンカットでもあれば、
ずっと説得力が増したと思いました。
キャスティングも優れた力作だけにストーリーのディティールにもこだわってほしかった気がします。