「レディ・イポリタの恋人 夢魔」(1974)はイタリアのオカルト映画で、
B級作ですが「エクソシスト」(1973)の大ヒット後に作られた亜流悪魔憑きホラーの中では
けっこう良く出来たほうでした。
当時、わりと短期間に活躍したカルラ・グラヴィーナのアンニュイな雰囲気が生かされています。
エンドクレジットに流れる「夢魔のテーマ」(LA LUCE)が長い曲で、
当時は今のように関係者片っ端から表示するということもなかったので、
クレジットが終わって画面が真っ暗になっても音楽が続くという珍しい状態になってしまいました。
この頃はエンドクレジットの後に短いドラマがあったりするので最後まで残る人が多くなりましたが、
私は映画音楽が好きで昔から最後まで見る習慣がありました。
さすがに、この頃の曲が3曲も4曲もかかる超長いエンドクレジットには疲労感を覚えることもありますが。
余談ですがヴァラエティでファーストサマー・ウィカが暇つぶしにスタッフの中で日本人名を探すことがあると発言していて、「あ、同じことしてる」共感をと覚えたことがあります。
話を「レディ・イポリタの恋人 夢魔」に戻しましょう。
幸い私が見た劇場では途中で映写を止めることもなく、
曲の最後まで上映してくれました。
場内の照明がついて立ち上がったら、もともと少なかった観客は私一人になっていて、
出入り口には係の人が腕組みをして劇場が空くのを待っていました。
この作品のサントラはシングル盤のみの発売だったのですが、
なんと曲の途中でフェイドアウトする短縮ヴァージョンで収録されていてがっかりしました。
劇場が最後まで上映してくれなかったら気づけなかったと思うので、
本当に感謝しています。
曲の完全版を聞けたのは、
ずっと後年になって「SEPOLTA VIVA」(1973)という日本未紹介作品のサントラとカップリングの輸入盤を入手した時でした。
本国でもシングル盤のみの発売だったらしく2曲だけの収録です。
演奏時間は「夢魔のテーマ」がCD5分25秒に対し日本版3分10秒、
B面「暗黒のテーマ」(IL BUIO)CD3分55秒がに対し日本版2分45秒と大幅に違っています。
どのような事情があったのか分かりませんが、かなりの暴挙と言えるでしょう。
作曲がエンニオ・モリコーネとブルーノ・ニコライ、指揮がブルーノ・ニコライとクレジットされていますが、
「夢魔のテーマ」はパイプオルガンのみ、「暗黒のテーマ」は多分数台のヴァイオリンとピアノのみの演奏で、オーケストラは使われていません。
曲自体はなかなか印象的で「夢魔のテーマ」は宗教曲を思わせる重厚な曲に仕上がっています。
「暗黒のテーマ」のほうは不安をあおるような不協和音のヴァイオリン演奏から始まって、ゴシックホラーに合いそうなちょっと暗い感じのメロディに変わっていきます。
「SEPOLTA VIVA」は「生きたままの埋葬」という物騒なタイトルですが、
1780年を舞台に若き伯爵が貧乏なヒロインと結婚して子供が生まれ、
財産を狙う兄弟がヒロインを幽閉して伯爵には死んだと思わせようとする、
というサスペンス・タッチのメロドラマのようです。
こちらは作編曲がエンニオ・モリコーネ、指揮がブルーノ・ニコライとクレジットされています。
聞いていてわりと小編成のオーケストラに感じられ、
アカペラ・コーラスのみの曲やヴァイオリンとハープシコード(多分)のみの演奏の曲もあります。
やや小品という印象ですが出来栄え自体は悪くありません。
特に4つのヴァリエーションで収録されている「ROMANZA A CHRISTINA」は
ゆったりとしたテンポで美しいメロディが奏でられ、なかなかの佳曲に仕上がっています。