製作年;1957
英語タイトル:THE AZTEC MUMMY
監督;ラファエル・ポルティージョ
脚本;ギルエモ・カルデロン、アルフレード・サラザール
音楽;アントニオ・ディアズ・コンデ
出捐:ラモン・ゲイ、ロシータ・アレナス、クロックス・アルヴァラード、ルイス・アセベス・カスタニェーダ
(ネタバレあり)
古代エジプトの呪われたミイラを描くことが多かったジャンルを、 アステカ文明に移しかえたホラー映画です。
3部作となっていて、コストパフォーマンスを良くするため3作同時に撮影したということです。
冒頭、バットと呼ばれるギャング集団と警官隊の銃撃戦が描かれる。
メキシコのアルマダ博士(ラモン・ゲイ)は学会で、催眠術によって前世にさかのぼる学説を発表する。
だが、その仮説は実証を伴わない空論として否定されてしまう。
アルマダ博士には二人の子供がいたが妻はおらず、 フロール・セブルヴェダ(ロシータ・アレナス)という婚約者がいた。
アルマダ博士の師でもあるフロールの父親セプルヴェタ博士が実験台になると申し出たが、
実験には過去から現在に戻る時ショック状態に陥る危険が伴い、
被験者は若くて精神的にも健康的にも強くあることが必要だった。
そこでフロールが実験台になると言い出す。
アルマダ博士は戸惑うが、フロールの決意は固かった。
その会話を窓の外から盗み聞きする覆面の男がいた。 やがて実験が開始されたとき、覆面の男は邸内に侵入してくる。
フロールはアステカの乙女だった前世を語り始める。
ソチという名のその娘は、生まれたときからテスカトリポカ神に生贄として捧げられる定めにあり、 それは名誉なことだった。
しかしソチはアステカの戦士ポポカと恋におちてしまう。
ポポカはソチとともに逃げようとするが、アステカの神官に捕まってしまう。
生贄の儀式が始まり、ポポカは秘薬を飲まされ、ソチの胸には短刀が突き立てられる。
短刀が突き刺さったその時、フロールは絶叫して意識を失う。
酸素吸入によってフロールは意識を取り戻すが、臨死体験に激しく動揺していた。
アルマダ博士とセプルヴェタ博士は、フロールの話の裏付けをとる必要があると感じていた。
覆面の男は、犯罪組織バットの首領だった。彼は部下にアルマダ博士の監視と盗聴を命じる。
首領とアジトにいる部下たちとのやり取りはテレビ電話で行われます。
はめ込み画像なのでフラットになっていて液晶画面ぽく、ここだけ近代的な印象でした。
アルマダ博士はソチの墓を暴いて証拠を探し出そうとする。
アステカの呪いを感じたフロールは止めようとするが、博士は聞き入れない。
臆病な助手のピンケイトを加えた4人は、 ソチの記憶を持つフロールを先導にアステカの遺跡へと侵入する。
アルマダ博士の息子もこっそり付いてきていた。
さらにバットの首領も見張っている。
アルマダ博士は遺跡の壁を破壊し、息子を加えた5人で奥へと入っていく。
ついに深奥の墓所に到達した博士は、フロールが止めるのも聞かず、 埋葬品の胸当てを証拠として盗み出す。
一行が去ったあと、墓所では何かが動き出していた。
アルマダ博士に胸当てを提示された学会の学者たちは、400年見つからなかった墓所を見つけたことで博士の学説を信用する。
アルマダ博士は解読した古代文字からアステカの財宝のありかを示す腕輪の存在を知り、それを取りに再び墓所に行く気になっていた。
学会の学者たちは、アステカの呪いについての伝承を信じてもいて、胸当ては墓所に戻した方がいいのではないか言う。
今度は老博士、ピンケイトと3人で遺跡に侵入する。
足音がして、そこには蘇ったポポカのミイラがいた。
3人は逃げ出す。アルマダ博士はミイラに足をつかまれてしまうが、2人に引っ張られてなんとか脱出。
石壁を積み直してミイラを閉じ込め、帰宅する。
バットのボスは、ついにアルマダ邸襲撃を部下たちに命じた。
夜中に起きだしたアルマダ博士の幼い娘は、胸当てを自分の寝室に持ち込んでしまう。
そこにミイラがやって来る。 ミイラを見て怖気づいたバットの手下は逃げ帰っていく。
少女の枕元から胸当てを取り返したミイラは、ソチに生き写しのフロールを見つけ、彼女もさらおうとする。
ミイラの姿を見て気絶したフロールを抱きかかえ、ミイラは去ってゆく。
足音で目を覚ました召使のホセがミイラを止めようとするが、ミイラの怪力にかなわず重傷を負う。
一方、手下の報告を受けたバットのボスはミイラなど信じずに激怒、自らアルマダ邸に向かう。
ホセから誘拐の話を聞いたアルマダ博士は遺跡へと急ぐ。
それを追跡するボスの車両。
一方、遺跡ではミイラが生贄の儀式を準備していた。
アルマダ博士の車を止めて襲いかかるバット一味。
だが、夜中に飛ばす2台の車を不審に思ったパトカーが追跡していた。
ボスあっけなく逮捕される。
ボスの正体は学会の一員でアルマダ博士のライヴァルであるクルップ博士だった。
アルマダ博士たちは遺跡の地下墓所に駆けつける。
ミイラは台座に横たわるフロールに短剣を振りかぶっていた。
アルマダ博士が拳銃でミイラの短剣を撃ち落とすが、ミイラ自体は銃撃でも倒せない。
戦士ポポカであるミイラ男がソチの生まれ変わりであるフロールを殺そうとする展開が理解できなかったのですが、
Wikiに書かれたプロットによると、 新たな生贄を捧げることによって自らにかけられた呪いを解き、 安らかな眠りにつこうとした、という設定のようです。
セプルヴェタ博士が十字架をかざすと、なぜかミイラはひるむ。 そのすきにアルマダ博士とピンケイトがフロールを救出。
3人の脱出を確認したセプルヴェタ博士はダイナマイトを灯火にくべて爆発させる。
崩れ落ちる墓所。 セプルヴェタ博士の犠牲によってミイラを倒すことができたのだった。
老博士がダイナマイトを持ち歩いていたという展開には首をかしげましたが、
そもそもアステカのミイラに十字架が通用するのか、という大きな疑問があります。
残り約20分になってようやくミイラが登場します。
まあ古いホラー映画にはけっこうあるパターンで、ハマーの「蛇女の脅怖」(1966)も同様だったと思います。
ただ、ミイラが登場するシーンは画面を異様に暗くして造形のボロが出ないようにしてるのは残念でした。
犯罪集団バットがミイラのストーリーに絡まないのも弱いところです。
ボスのクルップ博士はミイラの存在すら知らないまま終わります。
主人公が平気で墓荒しするのも問題ですが。
アルマダ博士役のラモン・ゲイは少なくとも大きな役では日本公開作がないようですが、メキシコ映画黄金時代の人気スターだったそうです。
残念なことに1960年に女優をめぐるケンカ沙汰で射殺されてしまったとのことです。
フロール役のロシータ・アレナスもWikiにメキシコ映画黄金時代最後のディーバと書かれるほどの人気女優だったようで、
ヒロインを演じたルイス・ブニュエル監督の「乱暴者」(1952)が公開されています。
クルップ博士役のルイス・アセベス・カスタニェーダもルイス・ブニュエル監督の「昇天峠」(1951)と「嵐が丘 」(1953)に出演しています。
ちなみにメキシコ映画黄金時代は1930年代から1950年代にかけてとのことでした。