Calace 1世時代のClassico Bを入手しました。

 

オールドマンドリンを収集してきて、Embergherの5bis、Calaceの900モデル、Vinacciaの4本ラインのBrevettatoモデルといった貴重なソリスト向けの上級モデルを入手してきたので今度はCalaceのClassico モデルをと思っていました。たださすがにCalace1世時代のClassico Aは制作された期間も短く、制作された数も少ないので売られる機会は皆無で今後も望めそうにありません。という訳でClassico Bに狙いを定めていたのですが、今回偶然に入手できました。

 

入手したBはラベルの制作年の部分が剥がれていて、年代が不明ですが、ラベルに記載されている住所と肖像でおおよその制作時期が判ります。ラベルの住所であるPiazza Cavaur,98には工房が1931年に移転していますので、1931年以降で、ラベルの左上に肖像があるので、1世が存命中であった事が判ります。参考までに申しますと、1世は1934年11月に亡くなってますが、翌年の1935年に製作されたClassico Aのラベルには肖像が消えています→参考リンク jiro Nakno collection 中野二郎 中野譜庫 (vinaccia.jp)(それ以降現在まで肖像が復活する事はありません)以上の事からこの楽器は1931年から1934年までの間に作られたものであると考えられます。 

 

以下この楽器の特徴です。

1.ボディの脇とバックには花模様の象嵌があります。Classico Aにはお決まりの装飾ですが、Classico Bには通常ありません。1世時代のBもないものがあります。この部分がAに近い外観です。ちなみに脇にある象嵌の花の数は現在5つなのですが、これは当時のAと同じ7つあり、洗練された細やかな技巧が感じられます。

 

2.ピックガードの形は明らかにジョゼッペ以降のClassico のピックガードとは異なります。典型的な1世時代の形で、突起があり、ピックガードの周囲を二重にラインが囲っています。なお、この楽器のピックガードには草のインレイが中央に入っており、わずかですが作りが見事です。この当時のカラーチェの白蝶貝のインレイは全てきめ細かく見事な細工で、とても素晴らしいと思います。恐らく腕の良い職人がいたのでしょう。現在までカラーチェ工房にこの技術が継承されなかったのは残念です。このようにピックガードにインレイの入ったClassico はこの楽器だけなのか疑問が残るところです。同時代のAB共見かけないからです。ちなみに1世が亡くなった翌年の1935年のClassico Aのピックガードはこの1世の頃のピックガードでなくジョゼッペ以降の突起がなく丸みのあるピックガードになっています。死後急に変更されたという事は恐らくこれはジョゼッペが考案したものなのでしょうか。

 

3.Bなので、当然渦巻ヘッドではなく平板のヘッドですが、その代わりにペグカバーには花を描いた見事な彫金が施されており、上質感があります。ペグカバーとはいえ時間と手間ひまかけていて最高のものを作ろうという意気込みが見られます。

 

4.指板にも特徴があり、サウンドホールの上まで各コースの指板が伸びていますが、コースとコースの間に隙間を設けており、延長部分の音響への影響を最小限にしています。これは近年のクラシコでも見られますが、この時代にGやD線をここまで延長させるアイデアを生み出したのは演奏の名手であった1世だからこそと思います。

 

5.ボディはBなので、彫り込みではありませんが、使用しているメープル材はトラ目のハッキリ浮き出た良質なものを使用しています。

この点はほとんどトラ目が見られない近年のClassico とは大違いです。

 

6.ペグボタンは驚いたことに金属製。磁石に反応するのでメッキですが、当時でも現在でも珍しくモダンでお洒落です。

 

7.ボディは大きく、今所有しているCalaceの900モデルより厚みがあります。写真で比較する限り、1世時代のClassico Aと同じ大きさに見えます。単純に彫り込みがされてないモデルと考えていいように見えます。リブの数は39枚もあり、現在のA33枚B31枚より多く、音響面で優れている事は明らかです。

 

 

 

以上からBであっても1世時代のものは作り質感共に群を抜いてると思います。現在のClassico とは全く別物です。

この楽器、現状ネックの反りがあり、表板も割れているので、修理が必要です。どこに依頼するか非常に悩むところです。喜んで引き受けてくれる職人さんに頼みたいと思います。

いずれにせよ、この貴重な楽器上手く修理して次世代に引き継ぎたい逸品だと思いますが、所詮二番手のBだから、それほどのものでもないかな?