先月の川口氏のラストリサイタルに続き、昨日また東京まで出てコンサートに行ってきました。Duo Alster(マンドリン児嶋絢子、ギター槐智明)のコンサートで、しかもめったに聴けない18世紀マンドリンを使用した曲も演奏予定との事で、これを逃したら、しばらく18世紀マンドリンを生で聴く機会はあまりないと思ったからです。実際公のコンサートで18世紀マンドリンやバロックマンドリンを弾く奏者は現在児嶋氏の他数名しかいません。

 

さて、大森からバスに乗り会場の太田文化の森ホールに着いたが、もう大勢の人。ホールの中も満席。まあ平日の昼なのでシルバーばかりは仕方ないか。1曲目は知らない曲、アルトフ作曲バルトロメイだが、出だしからシビレてしまった。マンドリン界ではポピュラーな曲でなく、知らない人多いと思うが、とても美しい良い曲だ。児嶋氏のムラのないトレモロがとても綺麗。ボルタメントも嫌味なく自然。児嶋氏はピックをサウンドホールのヘッド側で弾くのが特徴で、この辺りで弾くのが音色的に丁度合っている感じ。二曲目はお馴染みムニエルのマズルカコンチェルト。私も若い時から何回もこの曲弾いているが、彼女の今回の演奏は速度が速めで、16分音符の切れも良い模範的な演奏。私はややゆっくり目の速度で、テンポも少し揺らした方が華麗に聴こえると思って弾いているが、好みの問題なのだろう。今回の演奏は楽譜的には完璧で完全だ。三曲目はビアソラ。これはつまらなかった。クラシック曲ではなくタンゴとかジャズの要素も入っているのに、ピックの位置は動かない。音色は同じ。人間臭い曲なのだから、音色も澄んだ音だけでなく重かったり硬かったりしていい部分もあるし、もっとアクセントや強弱も強調すれば印象に残るのにと思った。休憩はさんで今度は、18世紀マンドリンでヴィバルディの協奏曲。やはり今のものより小ぶりの楽器で弦も違うから柔らかな音色だ。ピッチも415ということで心地よい。単音ばかりの曲だが、音が明瞭でトリルも装飾音もムラがない。続いてギターの槐氏による独奏。タレガのラグリマとアデリータ。使用楽器は西洋音楽を日本にもたらした比留間賢八氏がヨーロッパより持ち帰った1843年のベルフーモ。さすがに音も枯れていて、とても心地よく心に染みる音。もっと聴きたくなってしまった。なぜ彼が所有しているか分からないが、歴史的価値もあるし、今後も演奏会で聴かせてもらいたいものだ。次はコレッリのソナタ。マンドリンの曲ではないが、当時の雰囲気をマンドリンとギターで醸し出している。ここでも児嶋氏の演奏は明瞭快活。トレモロはなく単音だけだが、音の粒はむらなく明確に鳴る。最後の曲はロマルディのシンフォニア。トリルや装飾音もキレがよい。当時の雅な情景が彷彿されるような典雅な演奏でした。

アンコール曲はイフ・ウィ・ホールド・オン・トゥゲザーとマクダレナの歌。兎に角トレモロも単音も重音もむらなく綺麗に鳴り響かせてくれるのが彼女の特長。最後の曲はそれが活かされた曲だと思った。ただビアソラのようなちょっと泥臭い曲は綺麗なだけでは済まない。その辺りを克服できれば凄いと思う。

 

ところで、私も18世紀マンドリンを二台持っているのだが、そのうち修理に出して同じような曲を早く弾きたいものだ。