

他の手持ちの楽器でAまでのフレットのある楽器はと思って見てみたら、もう一本のコンサートモデルでないEgildo1926年がAフレットがあった。どちらもオリジナル仕様である。
この当時1920年代のEgildoはサウンドホールにインレイもない廉価版はE音まで(24フレット)だが、通常のものはA音(29フレット)までだったのである。この違いで楽器のレベルが判るのだ。
ちなみに、EmbergherはオーケストラモデルNo3以上でA音まである。No2以下やスチューデントモデルはEまでだ。
それではVinacciaはどうか。1920年代頃の同時期で見ると、最上級クラスのブレベッタートでさえE音までだ。私の所有しているヘッド2本線のブレベッタートは確かにE音まで。その上の4本線やビーナス像の付いているものでもオリジナル仕様はE音までなのだ。A音までのものがあったら、指板が変更されているとみていい。
Calaceは?最近手に入れたNo13モデルのCalace1919年はE音までだったが、No15や16biaの原型モデルも調べてみると、1920年頃のものでさえE音までである。クラシコだけはさすが別格でもちろんカラーチェの前奏曲が弾けるようA音まである。ちなみに今日販売されているカラーチェは元祖のモデル通りクラシコ以外はEまでである。そこまで合わせなくてもいいと思うのだが。
そうそうGelasはというと、サウンドホール上にわずかに飛び出した指板でC音(20フレット)までである。これは30年代以降でも変わらない。EやAまで延長したものを見た事がない。もしあるとしたら、後世指板を替えたものだ。Gelasは、やはり甲高い音の曲は合わない気がする。超高音より中低音の響きを活かした伸びやかな曲が合うのだ。だから、これでよかったのだろう。(但し希少なGelasのコンサートモデルはAフレットまでのが存在する)
時代はやや戻って20世紀の初頭1910年くらいまでで見てみると、ナポリの製作家の楽器はCalaceやVinacciaも含めほとんどが17フレット(A音)ないし19フレット(B音)までがほとんどだ(CalaceのNo13No15、16bisの原型モデルも1900年初頭はEまで延長されてない)。Gelasも17フレットまでしかなかった。EmbergherやEgildoはというと、この頃すでに24フレットまで延長され、さらに29フレットの5bisも出現している。
こうしてみると、EmbergherやEgildoは当初から芸術的で斬新な独奏曲を弾くのに耐えられる楽器を目指していた事が分る。だからフレットだけでなく、指板もブリッジもネックも胴も人間工学
的に考え、伝統的なナポリスタイルから脱しているのだ。VinacciaやCalaceはEmbergherの影響を受け、変化せざるを得なかったのだろう。ただ、Vinacciaは29フレットのものは作ろうとしなかった。24フレットまでがマンドリンの音の限界と判断したのかもしれない。Calaceは独奏用モデルはクラシコで十分と考え、他は24で止めたのであろう。
実際のところ、合奏やアンサンブルであれば、19フレットまでで十分だろう。合奏でクラシコを使っている人見ると、もったいないから独奏曲もやればと思ってしまう。
写真の楽器は全て指板はオリジナルです。これ以上延長しているものは後世の指板と考えてよいでしょう。
ところで、29フレットまでの楽器を最初に開発したのはEmbergherと推測するが、具体的に29フレットまで使う曲はその時存在していたのだろうか?もしなかったとしたら、先見の明という事になるが、、、、。作曲もする演奏家の勧めで29フレットまで延長したかもしれない(エンべルガー好きのラ二エリとか?)。恐らくそうだったのだろう。パスクアーレ・ヴィナッチャのペグの改良はマンドリンの発展にとって画期的といわれるが、フレットの延長も同じくらい画期的な事だと思う。