イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

イメージ 7

イメージ 8

イメージ 9

イメージ 10

イメージ 11

近代マンドリン製作の創始者と言うべきPasquale Vinacciaのマンドリンを手にいれいれました。1876年の製作のものです。1882年に亡くなっているので晩年近くのものです。

名前だけはマンドリン愛好家なら誰でも知っているのですが、現存する楽器が少ないせいか楽器店でもネットでもめったにお目にかかれません。フラテリやガエタノなら誰でも見かけたり、弾いたりした経験があるでしょうが、パスクアーレはまずないでしょう。

しかも珍しいフラットマンドリン。アメリカのフラットマンドリンの製作が本格化するのは1890年代からなので、それよりずっと以前にイタリアで作られていた事を立証する貴重な楽器でもあります。
なぜフラット状の楽器を作ったか?それは音を変化させる目的でなく、実用的な目的、つまり立ち弾きがしやすい事を目的としたのでしょう。

立つて弾いていたという証はこの楽器にあります。テルピースの方に象牙製と思われるエンドピンがあり、ヘッドの先端にも同様のピンがあります。
またフラットと言っても裏板は平な板ではなく、緩やかに曲がった板に仕上げています。通常のボウルマンドリンのようにリブを複数張り合わせて、これを可能にしているのです。なので、フラットといっても膨らみのある形状で、音色や響きは極めてボウルに近く響きも豊かでトレモロを弾いても違和感がありません。恐らく、Pasqualeはボウルの音に可能な限り近づかせたかったのでしょう。


同じようなフラットマンドリンをCristofaroも作っており、このブログでも紹介しています。こちらも合わせてご覧ください↓
http://blogs.yahoo.co.jp/altezza80jp/56476818.html
このCristofaroのフラットはネックの根本のヒール部分がないのが特徴です。今回のVinacciaはヒール部分があるので、少し胴が厚めです。その分響きは豊かなような気がします。

話はこのPasqualeの楽器に戻します。持った瞬間、あれ!と思う程軽量です。恐らく誰でもそう思うでしょう。それ程に軽いのがまず印象的でした。測ってはいませんが、500gを切るかもしれません。
破損や剥がれは修理されレストア済ですが、表板、裏板、側板、ペグ、指板、ブリッジ、テルピース全てがオリジナルなので、非常に貴重なものだと思います。姿が堂々としており、グランドファザーの風格があるような気がします。材料の木もいい物使っていると思います。写真では判らないかもしれませんが、表板は細かく密でほぼ同じ幅の木目のスプルースで、、同様のものはフラテリの上級品でしか見た事はありません。側板と裏板のメープルの木目も鮮やかです。

この楽器で特徴的なのが、ペグです。なぜかノブが9つあるのです。ブリッジの溝は8つ、弦留めは4本、通常二つずつしか通さないので1つ余るのです。何が目的で9あるのか?ちょっと不思議な楽器です。間違って作る筈がないので、謎めいた楽器です。

中低音が非常に美しく堂々と響く楽器です。オリジナルのせいか弦高が高いので、指板を替えれば、さらに弾き易く、音もクリアになるでしょう。

<追記>
ペグのノブが一つ多いのは、一つを肩紐を付けるのに使う為と考えればいいと思う。エンドピンもあり立つ弾く事を前提にした楽器なので、こういう事も配慮し作ったのだ。