そうこのマンドリンは表紙に出ていたマンドラと同じ有名なマリオ・マチョッキが監修したものです。
マチョッキのサインこそありませんが、ラベルにその旨書かれています。ラベルにはマチョッキが発刊した音楽誌L'estudiantinaの名前もあります。刻印もありますが、EとSがくっついた形に見え、この音楽誌の頭文字を付けたのでしょう。
これがラベルの内容です↓
Atelier de Lutherie
du journal L'estudiantina
Sous la Direction Technique
de Mario Maciocchi
14 faubourg St Martin - Paris
楽器の方ですが、表紙のマンドラと同じように表板の周囲とサウンドホールの周囲を小さな木片が囲んでいます。指板もブリッジもEmbergherのように傾斜しており、ヘッドの形も胴を囲む飾り板の形もEmbergherそっくりで、Embergherをマチョッキはかなり評価していたように見えます。であればEmbergherを勧めれば言い訳で、そうしたくなかったのは物足りない部分があったからでしょう。内部の力木はEmbergherのように傾斜してはなく、そうかといってEgildoのように普通の平行で均一の太さのバーでもない。E線側にいくほど幅広になっています。表板はかなり薄く、Egildoに近い。そう、ぱっと見るとEgildoのエントリーモデルに似ているのだけど、材質や仕上げはそれよりはるかに良く、ヘッドや飾り板はEmbergherぽい。しかし、胴の形状は大きく、ネックの根本部分では絞り込まれてない。EgildoともEmbergherとも違い、やはりちょっと独特な部分もあり、マチョッキの意見が反映されていると見なければいけないでしょう。
このマチョッキのマンドリン。あまり現存してないようで、日本でも欧州でもあまり見かけない貴重な存在です。落合マンドリンの創始者落合忠男氏は、エンべルガーやカラーチェを解体し研究しましたが、このマチョッキのマンドリンも解体し参考にしたそうです↓
http://www.ikegaku.co.jp/ochiai_suisen_takahashi.htm
そうそう肝心の製作者名ですが、ラベルには書かれていません。
奏でるマンドリンの表紙のマンドラと同じフランチェスコ・オリビエーリである事は間違いないでしょう。
楽器の状態ですが、古い弦が全てあり、弾けるような状態に張ってあった為、残念ながらネックは反っています。但し、表も裏も目検では割れはなく綺麗で、叩くと反応のよい音も出ます。
反りを直したら、どんな音がするか?胴体がEgildoより膨らみが大きいので、Egildoより骨太の音がするような気がします。