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昨夜は本当にマンドリン界では、画期的とも言える演奏会に行って来ました。
マンドリンと弦楽トリオ(Vl、Va、Vc)の演奏会です。
つまり、マンドリンとバイオリン属弦楽器とが共演する演奏会です。
こんな演奏会日本では過去にありましたでしょうか?

19世紀後半からマンドリンはイタリアからマンドリン合奏という形で興隆しましたが、
18世紀まではバイオリン属とマンドリンが共に演奏される機会が多く、その為の曲も
多く作られました。マンドリンと弦楽トリオという組み合わせもあり、20世紀前半には
欧州で再発見され、また新たな曲も作られたようです。
ただ、日本では今までそういう組み合わせでの演奏もされず、曲も作られませんでした。

今回柴田高明氏はこうした現状を打破し、「マンドリンがクラシックの独奏楽器とし広く認知
される為には、より多くの良質な室内楽が必要」と考え、新作を何人かの作曲家に委嘱し
、今回「マンドリンと弦楽トリオのための現代邦人作品集」というCDを出しました。
今回はそのCDの発売記念のコンサートでした。

私も18世紀までのマンドリンとバイオリン属が共演する曲が数多くあるのに、日本では
演奏される機会が全くない事に非常に落胆しておりました。日本では、この組み合わせで
演奏したいと思う奏者がいないのではないかと思いましたが、、、
やはりマンドリンの歴史に詳しいアカデミックな柴田氏。やってくれました。

記念コンサート開くと聞いて一番心配したのが、音量でした。バイオリン属の音量に負けて
しまうのではないか?
演奏会の第1曲目を聴いて、安心もしましたし、こんなにもバイオリン属との絡みで面白い
音楽になるとは想像できませんでした。ただ、バイオリンなどがテーマ部分を歌う場面で
リズムを軽くマンドリンが刻む部分などは、もう少し遠慮せず、音を出して前面に出てい
ってもいいのではないかと思いました。レコーディングではミキサーで調整できるのです
が、生では調整できません。ホールはちょうどよい大きさだと思いました。あれ以上広いと
マンドリンの音が拡散され、もっと弱くなってしまう気がします。

一番印象に残ったのは、1曲目の「アストロナム四重奏」でしょうか。バイオリンの深み
のある主題の線の流れと超絶技巧によるマンドリンの点の炸裂。対比と融和の極み、ここに
ありという感じでした。
聴いていて、柴田氏の凄まじい熱意が感じられました。この人は口だけでなく、本気なんだ
なと感じました。共演した3人の奏者も真剣に(かつ楽しそうに?)演奏していましたね。
音を出して合わせてあげればいいというのでなく、音楽を共に作り上げようという感じが伝
わってきました。この3人音楽性も技も素晴らしい!若い頃、伝説の岩本真理四重奏団や
名門スメタナ四重奏団等を生で聴いた私が言うのだから本当ですよ。いい共演者に巡り会え
ましたね。本当にこういう素晴らしい方々とマンドリン演奏家がもっと交流し、演奏する機
会が増えれば、マンドリンもクラシックの独奏楽器として日本で認められると思います。

一番好きになった曲は、ジョバンニ・ホフマンの四重奏イ長調でした。
これ作られた時代もありモーツアルト風。とても優雅で、癒される曲です。
日本人の現代曲はかなり構えて聴かねばなりませんが、ゆったりした椅子に掛けて、のんびり
聴くには最高にいい曲です。ザルツブルグ・モーツアルテム音楽大学卒業の奏者も2人いたせ
いか、非常に温かみのあるふくよかな感じの弦の響きが印象的でした。

柴田氏の本気度は最高です。彼をマンドリン界のドンキホーテにしてはいけません。
賛同も応援も出来る限りしてあげるべきでしょう。他のマンドリン演奏家も後に続くべきです。
私のような愛好家は、演奏会に行ったり、CDを買ったり、こんなふうにネットで情報を拡散
するしかないのだけど、やれるだけの事はしてあげたい。

3月14日は広島東区区民センター15日は京都青山音楽記念館で同じ演奏会が予定されてま
す。素晴らしい演奏でした。是非行くべきでしょう。