今度は、マンドリンという楽器そのものの将来を考えたいと思います。

マンドリンと今一口に言っても、ボウルもあれば、フラットもある。
形がバイオリンのように統一されていません。
ボウルにしても、リブの数すら統一されてない。使用する木材も決まって
いない。ヘッドの形もサウンドホールの大きさも決まってない。いろんな
形仕様のマンドリンがある。
まさにマンドリンという楽器は発展途上でもあり、多様化しているのです。

これが将来も続くのか?どういう形になっていくか興味深い事である。

恐らく、どうなるかは、マンドリンの需要に左右されると思います。

マンドリンを弾く人が減り、需要が減退すると、製作家も減ります。
残った製作家も、製作本数が減り、いろんなモデルにチャレンジする機会
を失います。売れなくなるので、売れそうな形・モデルに集約する傾向に
もなるでしょう。

多様化はストップし、逆にマンドリンという楽器は過去の名器を真似た楽器
になっていくでしょう。
今だって、そういう傾向です。日本人の製作家のもの、昔とはまったく違っ
た形になっていて、ほとんどエンベルガータイプになっている。クラシコか
エンベルガーに真似れば売れるのでしょう。
花子の親父さんみたいな人はもう現れないかもしれません。

マンドリンの形さえも、マンドリン人口やマンドリンの需要に影響されるのです。

次にオールドマンドリンについて考えてみましょう。

初めに断わっておきますが、私が言うオールドマンドリンは文字通りのオールドマンドリンです。
特別扱いの巷で言う「銘器」に絞ってる訳ではありません。
old mandolinは海外では文字の通り古いマンドリンです。

「銘器」も含め、19世紀から20世紀のマンドリン全盛期に欧州で作られた
マンドリンは作られて80年以上経過しています。これらのマンドリンを私
は今まで数多く収集し、見てきました。それから言えるのは、マンドリンは
接合部分が多く、経年劣化で剥がれやすいという事です。それだけではあり
ません。弦圧がバイオリンの倍もかかる為、弦を張ったままだとネックは曲
がったり、表板に歪みや割れを発生させやすいのです。

マンドリンは自らの構造上の問題で、短命な運命にさらされていると思います。
状態が良いものを除き、修理して使ったとしても、後100年持つかという気
が私はします。修復を繰り返せば、元の本来の音が失われますので、100年
という見方は厳しいものではないと思います。

オールドマンドリンの中でも「銘器」以外は、非常に人気がありません。
ナポリの中堅製作家のものは、ほとんどVinacciaに近い作りをしている
のですが、それでも人気なく非常に安く手にはいります。これらの中堅製作家
以外の無名の製作家となると、もう買い手があればいい方でしょう。いいものも
中にはあるのですが、これらは弾かれずに消え去る運命でしょう。

この世に「永久」というものはありません。どれもはかなく消える運命なのです。
次世代につなぐしかない訳で、今の「オールドマンドリン」はいつかなくなり、
次の世代が「オールドマンドリン」になるでしょう。

20世紀後半日本のマンドリン全盛期に多く作られたマンドリン。これらが
優秀な「オールドマンドリン」として位置づけられるに違いありません。


(この話長くなります、続きはマンドリンの将来「その4」に書きます)