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Gelasのフラットは一時手に入れたが、最近ボウルを手に入れて
どんな音がするか確かめたくなった。なんせ、昨年6月に一時入手し
たものは、演奏不能品だった。
ボウルであれば、客観的に他と比較できるでしょう。

2月半ばに入手したGelas1927年がやっと最近になってフランス
から到着しました。山深いアルプ地方からやってきたのだからしかたない。
海外から来た未調整品なので、どんな代物なのか心配していた。
着いてみると、木製のケースも割れている、、、
これはダメだなと思いケースをあけたところ
大当たり!いい楽器に当たりました!
ネックも真っ直ぐ、リブの剥がれもなし、裏も表も割れなし、傷もほとんど
ない。あまり使われなかったらしく、フレットも指板もほとんど磨耗してな
い。ほとんど新品に近いと言ってもいい。とても80年以上経過していると
は思えません。
難を言えば、ピックガードの鼈甲が割れ、糸巻きのツマミが半分欠けて、取
れている位。

<この楽器の特徴>
テルピースに肩紐を通す輪が付いており、当時の紐がそのまま付いている。
かなり古い弦が付いているので、最近付けられたものとは考えられない。
それと、Gelasでは、多く見られるが皮製の肘宛が付いている。これが
また洒落ている。未調整品ならではの楽しみである。
(その当時のケースも付いている事も多く、これも楽しい)
さらに、今回は当時使っていたであろうピックも付いていた(やや虫食いし
ているが)

5日ほど前に、ツマミを強力接着剤で付け、弦も替えて弾けるようにした。
ところで、弦を替えるのに、この楽器は非常に面倒な事に気が付いた。
写真を見ればお分かりかな?

まずは、穴に弦を通さねばならないが、特にEとAは穴が小さく、針に糸を
通すような感じである。やっとの事で穴に弦を通せたとしても、、、、
写真見てください。すぐにブリッジの壁にぶつかり、先に進めない。弦を上
に持ち上げたいが狭くて指も通らない。でどうするか。弦の先を5ミリほど
まげて穴に通す。そうするとやっと曲げた部分をつまんで、弦を上にもちあ
げられるのである。ブリッジの構造上の問題であるが、こんなに弦替えに手
間取る楽器は他にないのではないか。

弦をやっとのことで替え、弾いて見ると、、、

やはり音量が大きい。胴が二重構造になっているので、胴の前の部分と後ろ
の部分が同時ではあるが、別々に響いている感じがする。ダブルで共鳴して
いるので、音が大きいのであろう。自動車ならターボ車だ。パワーがあるは
ずだ。パワーがあるから、反応もいい。ちょっとの力で、より大きい音が出
る。車で言うと、ちょっとアクセルを踏めば、楽に急坂を上がる、あの感覚
に似ている。カラーチェなども大きな音が出るが、それらより反応もよい気
がする。
キャパシティがあるせいか、早弾きの部分などは、一音一音明瞭に鳴るよう
な気がする。いつも弾いているチャルダッシュも、この楽器だと、歯切れが
よくチマチマした感じにならない。

音色は、ナポリのオールドに比べ、高音も低音も柔らかだ。
特に高音の艶やかさは格別である。
弦をEAオプティマ赤、DGトマスティークにしたが、これでいいかは分か
らない。低音部はもっと合う弦があるのかもしれない。

ところで、改めて見るとGelasのネック部分は、かなり狭い。ネックの
断面も三角に近く、手の小さい人には弾きやすくできている。音も柔らかだ
し、女性に向いている楽器ではないかと思う。人相は鉄仮面のようであるが
中身は優しい紳士である。もっと女性の方に弾いてもらいたい楽器だ。
そうそうマリア・シヴィッターロもGelasを愛用していたのですよ。

指板のナット部分の幅:27ミリ(同時代のCalace1925年28ミリ)
指板の最大幅:39ミリ(同上 42ミリ)
数字上からも明らかに狭いのですよ。

Gelasを持ってみて、これは間違いなく「名器」だと感じる。
本当に洗練された仕上げ・音である。それにしても、このGelasの特殊
な構造を考えた製作家は大した人物だと思う。音の素晴らしい楽器を独自の
方法で作り上げようとする強い意志を感じる。現在、電子楽器はともかく、
アコースティック系の楽器で、このような革新的な創造を試みる製作家はい
るのだろうか?
「ストラディバリウスがヴァイオリンの完成形」だなんて言わせてはいけな
い。ヴァイオリンもギターもマンドリンも、もっともっと進化させられる余
地はあるはずだし、進化させねばいけないのではないか。
ただ、製作家だけでは、どうにもならない。製作家の作った楽器をきちんと
評価できる演奏家・聴衆がいる事が前提だ。だから、ことマンドリンについ
てはヴァイオリンやギターのように愛好する人口を確保する事が重要なので
す。ヴァイオリンやギターは愛好家人口が多いし、層も厚いから、その辺は
心配ないと思います。

ところでGelasですが、実はもう1台手に入れました。1914年製で
普通Gelasの裏板はメープルなのですが、これはローズウッドです。
傷みも少なく、これも完動品です。メープルのGelasと弾き比べる楽し
みも得る事が出来ました。そういう意味で、オールドマンドリン愛好家とし
ては、本当に嬉しい春になりました。まだ弦は張り替えていません。これか
ら張り替えて、どんな音が出るか楽しみにしています。そのうち、このブロ
グで紹介します。

Gelas2台を手にいれたので、Vinaccia1909年は手放しま
した。Gelas1927年は死ぬまで手放したくない気がしてきました。
もちろん、このブログで音を聴けるようにしたいと思いますが、吉田剛士さ
んのGelasを聴いている人多いから、必要ないかな?
でも、Gelasをよく観察してみると、年代によって形も二スの色も微妙
に変化しています。吉田さんのは30年代、私のは20年代半ば。音は違う
かもしれませんね。
ローズウッドのGelas1914年は珍しいので、音が聴けるようにした
いと思っています。

<4月23日追記>
Gelasを弾き始めて感じた事がある。この楽器はソフトな音がするので
鼈甲ピックより合成樹脂のピックの方が相性がいいような気がする。
オザキさんとこで買ったCeciliaというイタリア製のピックで今弾い
ている。これが一番合っている感じです。

Vinacciaなんかだと圧倒的に鼈甲がいいのですが、不思議ですね。