もう30年程前、晩年に近い古賀政男の指揮を見たことがあります。明治大学マンドリンクラブの定期演奏会でした。見た目にも体が衰えており、少し体がよたよたした状態でした。それでも指揮をする時は背筋を伸ばし、音楽に真正面に向かう姿は感動的でした。しかも曲は演歌でもポピュラーでもありません。グリーク作曲「ソルベージの唄」です。すごく情感のこもった演奏でした。クラシックと古賀政男てなにか結びつかないけれど、彼はクラシックをかなり好きだったはずだし、研究もしていたとこの曲を聴いてすぐ分かりました。後にも先にもこんな綺麗なマンドリン合奏を聴いたことはありません。もっと早く彼の指揮するマンドリン合奏を聴くべきだったと、その時聴きながら思ったものでした。日本のシューベルトといわれますが、まさにふさわしい方だと僕は思います。