筒井康隆 残像に口紅を
「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい・・・・・・。言葉が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長編小説。全307頁第一部 世界から言葉が消えていく第二部 世界からはすでに「あ」と「ぱ」と「せ」と「ぬ」と「ふ」と「ゆ」と「ぷ」と「べ」と「ほ」と 「め」と「ご」と「ぎ」と「ち」と「む」と「ぴ」と「ね」と「ひ」と「ぼ」と「け」と「へ」と「ぽ」と 「ろ」と「び」と「ぐ」と「ぺ」と「え」と「ぜ」と「う゛」が消えている第三部 世界からはすでに「あ」と「ぱ」と「せ」と「ぬ」と「ふ」と「ゆ」と「ぷ」と「べ」と「ほ」と 「め」と「ご」と「ぎ」と「ち」と「む」と「ぴ」と「ね」と「ひ」と「ぼ」と「け」と「へ」と「ぽ」と 「ろ」と「び」と「ぐ」と「ぺ」と「え」と「ぜ」と「う゛」と「す」と「ぞ」と「ぶ」と「ず」と「づ」と 「み」と「ざ」と「ど」と「や」と「じ」と「ぢ」と「き」と「で」と「そ」と「ま」と「よ」と「も」と「げ」と 「ば」と「り」と「ら」と「る」が消えている調査報告 泉麻子(JR東日本情報システム)筒井康隆『残像に口紅を』の音分布 大谷静夫(計量計画研究所) 309計量国語学第十八巻第二号 1991年