私と糖尿病 | 八海老人日記

私と糖尿病

           (太田君、八海老人、森君)


 昨日、8月9日、茨城県守谷市に住む大学のクラスメート森君の家まで、同じクラスメートの太田君と共に、森君のお見舞いに行ってきた。森君は、糖尿病に関しては、私の大先輩で、今から15年ほど前、東京都済生会中央病院に渥美先生と云う糖尿病の名医がいると教えてくれたのみならず、私をその先生紹介してくれ、教育入院の世話までしてくれた。私が今でも元気でいられるのは、彼のお陰といってよい。さもなければ、とっくに心筋梗塞か何かで、あの世へ行っていたことだろう。


 だが、彼自身は、無類の酒好きで、脳梗塞を発病するまでは、中々酒が止められず、酒を止めるくらいなら死んだほうがましだなどと放言していた。だから、糖尿病科に通院治療に通っていても、口の悪い主治医の松岡先生にいつも叱られ、「あんたみたいな人がいるから日本の保険医療が赤字になるのだ」と悪態を突かれるのが部屋の外まで聞こえたりした。


 平成4年8月、森君が東京都済生会中央病院に、2週間の教育入院中、NHKの取材が入ったことがあった。苑頃、糖尿病は国民病といわれ、患者が急増していた。NHK大阪文化部では、糖尿病週間と銘打って、NHKスペシャル「糖尿病」という番組を企画し、その映像編成に当り、糖尿病教育入院の模様を取材するため、糖尿病に関しては日本で一番権威があるとされている東京都済生会中央病院を選んだのであった。


 取材は、2週間、放送は、11月4日、19時30分から20時44分まで。その間に約10分間、東京都済生会中央病院における糖尿病患者の教育入院風景が放映された。最初、大阪NHK文化部が取材に来た時、入院患者でもない人を「やらせ」として台詞を覚えこませて連れて来た。糖尿病の入院患者にいきなりマイクを向けても、碌に喋れないだろうと考えたらしい。ところがその「やらせ」を断固拒否したのが森君であった。入院の動機から入院生活の詳しい様子、患者としての感想など、殆ど一人で喋り捲り、「やらせ」の出る幕はなかった。


 NHKスペシャル「糖尿病」は、11月4日、全国に向けて放送された。私はこれをビデオに収録し、クラス会で再生してみんなに見せた。教育入院中のNHKの取材に対し、森君の孤軍奮闘振りにみんな拍手喝采した。その翌年、2月28日からの教育入院に、私も森君の紹介で参加した。その時、同室だった星野さんという人とは、15年もたった今でも、毎年年賀状を交換し、お互いの健勝を確かめ合っている。残念ながら森君は、脳梗塞を発病し、現在、要介護ー1でリハビリを続けながら私たちの健康を気遣ってくれている。私たちにとっては有難いかけがえのない友である。