中東情勢
8月20日(日)の新聞記事によると、イスラエル軍が19日未明、レバノン東部ボダイにヘリコプターで侵入し、イランからのロケット輸入を阻止するためという口実で、ヒズボラ(イラン、シリアがサポートするレバノンのイスラム教シーア派の民兵組織。アメリカは、中東の治安を害するテロ組織の一つと見做している。)の拠点に攻撃を加えたという。
約1ヶ月続いたイスラエル・レバノン戦争は、両国が国連安全保障理事会の停戦決議を受け入れ、今月14日に停戦が発効したかに見えたが、国連決議は、イスラエルの自衛権行使を認めており、イスラエルは、ヒズボラがイランからのロケット輸入を止めない限り、攻撃を続けると主張している。これでは、折角の停戦決議も無効に等しい。戦争継続で迷惑するのは住民だ。
イスラエルという国は、広さは日本の四国程度。人口は700万人弱。その八割が旧約聖書を奉ずるユダヤ教徒である。首都はエルサレム。ユダヤ人は古い民族であるが、今から二千年前、エルサレムで生まれたイエスキリストの言行を理解しようとせず、十字架にかけて殺したばかりでなく、初期キリスト教会を迫害した。その後キリスト教会が勢力を持つようになると、逆にユダヤ教徒が迫害された。その結果ユダヤ人は、キリスト教社会で祖国を失い、ヨーロッパの各地に離散して流浪の民となった。ナチスドイツのヒトラーは、ユダヤ人を地上から抹殺小とした。
第二次世界大戦が終わった後、1947年の国連総会は、パレスチナをアラブ国家とユダヤ国家に分割する決議を採択した。イスラエルは、1948年、この決議を受け入れて独立を宣言すると共に、アメリカから戦車、航空機などの武器を輸入し、軍備を増強した。背後にユダヤ系アメリカ人のサポートがあったことはいうまでもない。
アメリカ・ネオコンの行動原理の一つである単独覇権主義は、アメリカの圧倒的軍事力による世界秩序の維持を目的とするものであるが、ハマスやアルカイダなどの国際テロ組織は、民衆の宗教的洗脳による自爆テロを産み出すことでアメリカに対抗している。テロ組織にこれを考え付かせたのは、忠君愛国思想に洗脳された若者たちが、アメリカの戦艦や空母に体当たり自爆した日本の特攻隊であった。ハマスやアルカイダの自爆テロは、日本の神風特攻隊と同様、アメリカによる力ずくの覇権主義外交の産物である。
イギリス・ロンドン大学政治経済学院客員教授・ロナルド・ドーア氏も、日本主導による北朝鮮に対する力ずく制裁決議に疑問を呈している。北朝鮮の行為を人道問題だ!制裁に値すると、声高に叫ぶ拉致被害者たちの声は、勿論理解できるが、これをナショナリズムに結び付ける事が最善かと言うことである。ナショナリズムに結びつけるということは、戦争も辞さないということである。世界世論やアメリカの覇権主義に期待するのは考えが甘いと思う。