小唄人生
観泉寺境内の梅がやっと咲いた。今年は、寒い日が多かったせいで、例年より大分遅いようだ。 久保田万太郎の作で、「冬の梅」という小唄がある。
嘘も隠しも 隠しも嘘も
泣いて見せたる 実意の程よ
咲いていじらす 冬の梅
生きるため、花街で媚を売る女。そんな女でも好きな彼氏がいる。馴染みの客にからかわれたりすると、嘘も隠しも出来ず、つい涙ぐんで本音を見せてしまう女の若さ。今日の様な寒い冬日にも、いじらしく梅は咲いている。
一夜、「ばあ小うた」でくつろぎながら、こんなのが出来たよと示した久保田万太郎の心憎い唄に、すぐ三味線を引き寄せ、即興で附けた山田抄太郎の曲の、又なんともいえない素敵さ。こういう小唄を残してくれた先達達の有難さよ。