繭子の物語 - 二人の母と二人の海 その2 | A portrait of.....

A portrait of.....

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それは義母の名前だったが思わず振り向く。

後ろにいたのは、恐らく50代後半か60歳位、義父母と同じ歳位の男性だった。

私が振り向くと男性はびっくりした顔をして、「申し訳ありません、人違いをしてしまったようで…」と慌てて私に謝る。

今日子は私の義理の母の名前ですけれど…。

「ではもしかしてご長男のお嫁さんでしょうか」

はい、そうです。

「そうでしたか。いや、本当に失礼をしてしまって…。」

恐らく義母の年齢の女性と見間違えたのは失礼だと思ったのだろう。しきりに恐縮しながら丁寧な言葉で詫び続ける男性にふっと心が和んで口元が緩む。
それを見て男性も安心したのか、
「お里帰りですか?お盆までいらっしゃるんですか?」と質問を投げかける。

いえ…。今回は連休を利用して来たので明後日にはもう帰るんです。
お盆は私達夫婦と息子達でアメリカに旅行に行く事になっているので…。

「そうですか。それは残念ですね。この地方のお盆はとても風情があって見る価値があります。是非来年はお盆まで滞在して下さい。」

私も慌ただしく海外に行くより日本ののんびりしたお盆に心惹かれたけれど、お盆とお正月しか長期休暇がとれない夫は海外に行きたがった。それに加えて夫は会社公募のMBA留学試験を希望していたので、休みの時もなるべく本場の英語に触れておきたかったのだろう。私が自分の実家に帰るより海外旅行の方が喜ぶと疑っていないらしく、今回も嬉々として行き先を決めてきた。夫と行き先を聞いて喜ぶ息子達の屈託のない笑顔を見ると私も異を唱える気にはなれなかった。

続く