物語の結末等に触れている箇所がありますのでご注意下さい。
チュンサンは交通事故の後遺症で徐々に視力を失っていったが、視力が完全に失われる前に、最後の仕事として私の模型を元に図面をおこした。
チュンサンの失明が明らかになった後、チュンサンの大学の先輩でもあり、部下でもあったキム次長が会社に働きかけてこの家を建ててくれたのだ…。
この不可能な家は会社の得意先を接待する為に、チュンサンの会社役員の個人的な依頼として建築する事になったと聞いた。ちょうどアメリカ資本の大規模リゾート開発を請け負う事が決まっており、クライアント先の会社役員や関係者が頻繁に韓国へやってくる事になっていた。
建築のレベルを見せるためにも、クライアントにホテルでなくこの家に泊まってもらい、チュンサンの会社の役員やデザイナーが接待したようだ。
この家が失明したチュンサンの最後の作品と思ったキム次長は何としても実際の建築まで漕ぎ着けたいと、あちこちに奔走してくれた事は後に知った。
「父もユジンさんの設計と知ったのは大分後になってからのことでした。施工している間も海と木の香りがして、とてもいい気持ちで作業ができたと言っていましたよ。父にしては珍しくこの家に住む人がうらやましいなんて言ってました。」
ありがとうございます…。どこかのタイミングで私達夫婦で買い取れればと思ったんですが、とてもとても私達の手の届く範囲の値段ではなくて。
「あの、ユジンさん。僕ユジンさんにお願いしたい事があるんです。」
続く