ストーリーの結末等に触れている部分がありますのでご注意下さい。
おじさんの息子さん⁉︎
大声を上げてからしまった、と思った。
実の息子さんの前でおじさんはないだろう。
す、すみませんと慌ててあやまる。
「いえいえ、いいんです。父はユジンさんから『おじさん』と呼ばれてとても喜んでいました。
我が家は男だけで女の子がいなかったので、実の娘のみたいだと嬉しそうでした。
ユジンさんご存知のように思った事をすぐ言ってしまうので、失礼な事をたくさん言ったと思いますが…。」
そう、おじさんと初めて会ったのは私が仕事をはじめて確か四年目位だろうか…。
ヨンアさん達と作った小さな事務所でコンペに出品した作品で賞をとった。
受賞の記事がインテリア雑誌に掲載され、私達の事務所に直接仕事の依頼が入ってくるようになった。
最初のデザインから任せてもらえる事が嬉しくてたまらなくて、無我夢中で徹夜を何度もしながらデザインを考える日々が続いた。
ある日施工管理も合わせてお願いしたいという依頼があり、私は初めて現場監督という肩書きをもらう事になった。
現場に初めて行く日の前夜は嬉しくて、でも私が陣頭指揮をとって上手く職人さん達とやっていけるのか、心配で心配でまんじりとも眠れなかった。
明け方にやっとうとうとしかけた。
7時!
しまった!寝坊した!
関係者の集合時間は8時だ。バスでは絶対間に合わない。
顔も洗わずにカバンを抱えて家を飛び出した。
持って行くものは前日に全部準備しておいてよかった。
腕をぶんぶん振り回してタクシーを捕まえ、倒れ込むように乗り込む。
「お願いします。8時までにどうしても着く必要があるんです。なんとか急いでお願いします。」
運転手さんは「8時~?無理だと思うけどね~」と渋い声を出しながら振り向いたが、私の顔を見てびっくりしたような顔をしてアクセルを強く踏み込んだ。
後部座席から運転手席のシートにかじりついて、
「あっちの道の方が空いてます。もっとスピード出ませんか?」
「もういっぱいいっぱい。これ以上は無理だよ。」
8時数分前に工事現場の入り口に着いた。
「ありがとうございました!お釣りはいりません!」
叫ぶように言ってタクシーから飛び降りる。
仮設プレハブの建物近くには数十人の作業服を着た男性達が集まっている。
私が全速力で駆け寄って行くと熊のようないかつい男性が立ちはだかった。
「馬鹿野郎‼︎」
続く