お読みいただいてる皆さま、ありがとうございます。
韓国ドラマの名作 冬のソナタは沢山の「その後のストーリー」または主人公以外の眼からみた物語が沢山綴られているようです。
もしかしたら皆さまのストーリーに対するイメージを壊してしまうかもしれませんが、ごく一部を切り取った短いものですのでどうかささっとお付き合いいただければ幸いです。
ストーリーの結末等に触れている部分がありますのでご注意下さい。
ヨングクは勤務先の動物病院が土日も隔週で診療があるので今日はお仕事なのだ。
チュンサンも土曜はだいたい建築現場での立ち会いがあるため夜までいない。
今日は家の中ですぐ着替えられるから、あまり着られないモヘアの首のあいたセーターを着よう。
これはとても暖かそうな色で買ったのだけど寒い時には首が寒い。でもモヘアなので暖かい日には少し暑くなってしまうのだ。
下はジーンズでもよいけど、一応可愛い女の子のお客様なので少し華やかな春色のスカートでお出迎え。
タイツは軽さを出すためにレース部分のある明るいグレー。
スカート ノーリーズ 値段あれっ(^_^;)
タイツ ブランド名失念。国産のそんなに高いものではなかったはず…。
「ユジン、久しぶり~。わ~、二人とも大きくなったねぇ。僕はチュンサンにずいぶん似てきたね。」
ひとしきり高校時代の友人の近況話に花を咲かせた後、だんだんチンスクの話の雲行きは怪しくなってきた。
「ヨングクは毎日帰りが遅いし、家にいるとお義母さんが来て娘を将来どの学校に進学させるつもりかとか、まだ英語習わせないなんてどうしてとか質問責めなの…。私も外でまた働こうかなぁ。」
「ユジンはいいなぁ。小さい子供もいるのに仕事もしてて。」
チンスクは高校を出て色々な仕事を転々とした後、何もしていない時があった。仕事をしていない時にチェリンのブティックに誘われて働いていたけど、ヨングクと結婚した時に退職している。そのまま続けてもよかったと思うけど、チェリンは海外の出店に熱心になってソウルの店にいる事が少なくなった。とても高級なお店だったので、素朴なチンスクは他のスタッフとは合わなかったのだろう。
「ユジンはすごいよね~。学校出てすぐにインテリア事務所作ったりして」
事務所を作ったといってもその時に就職先がなかったので、学校の先輩のヨンアさん達が事務所を作るのに仲間に入れてもらっただけなのだ。事務所も最初は他の事務所の空いてる机を間借りしただけだ。
しばらくは仕事がなかったから、建築会社の下請けで壁塗りのアルバイトをしたりした。
きちんとお給料出たのは数年たってからだった。
「子供が産まれたばっかりの時もあちこち飛び回っていたし…。」
その時はまだチュンサンの目の病状が良くなくこれからどうなるかわからなかった。どうやったらチュンサンがまた建築の仕事が出来るか頭を捻り出して、色々な会社に営業に回ってみた。
目のハンデを私、もしくは別の方法で補って再び仕事が出来るようにと必死で考えて奔走していた。
ヨンアさんと作った事務所はアルバイトという形にしてもらって、仕事が出来る時だけ時給制で働く事にした。高名なピアニストのお義母様は当然経済的支援を申し出てくれたけれど…。
「何とか自分達だけでやってみたいんです。どうしても困ったら助けをお願いしますから。」
貯蓄を切り崩してアルバイト代で、しかも子供もいて生活するのはとても不安だった。
けれど、まずはチュンサンが目のハンデがあっても仕事が出来るようにする事、それが私の最優先だった。
息子が生まれたばかりの時は、チュンサンも一人では出歩けなかった。チュンサンに息子をうちで見てもらいながら、私は建築事務所などを飛び回って時々家に戻って慌てて授乳したりした。
母や妹は2時間以上離れた春川、お義母さまは海外と身近に頼れる相手はいない。
あの時はチュンサンも家で辛かったと思う。
バリバリやっているというより、そうせざるを得なかったというのが私の正直な気持ちだ。
「今もバリバリやってるし…。」
チュンサンが以前と同じように働けるようになった今、私はヨンアさんの事務所で今度は歩合制で働かせてもらう事にしている。事務所の経営が決して楽ではない事がわかっているので、私が仕事が出来ない時は他のスタッフにやってもらった方が心の負担がないからだ。
そのお陰で常に納期日程を逆算して早め早めに仕事の進捗状況を把握するようにしている。
ヨンアさんからは
「ママになってからのほうが余裕が出来たんじゃないか」とからかわれる。
「あ~、ユジンが羨ましい。」
私はのんびり家事子育てしているチンスクの生活もいいなぁと思うけど、どうだろう…。
チンスクはどんな仕事がしたいの?
「う~ん、自分を活かせる仕事かな?」
そう?私は自分を活かしているのかよくわからない。正直目の前で起こる事や頼まれるままに無我夢中でやってきただけ。チュンサンに再会しなかったらまた違っていたかもしれない。
「仕事楽しい?」
う~ん、楽しいような楽しくもないような。お客さんが私の仕事を気に入ってくれれば嬉しいけど。
この返事にチンスクは不満そう。
私は世界で一番好きな人と家族を持つ事は夢また夢と思っていたから、その夢が叶えば他の事はどうでもいいのかもしれない。
早いうちにその夢を叶えているチンスクの事が私は羨ましいけど。
そう言うと、チンスクは笑顔になるのを我慢してプイッと横を向いてしまった。
高校生の時からちっとも変わらない。
終わり