(再録)稲葉 剛「貧困パンデミック(寝ている『公助』を叩き起こす)」(明石書店・1800円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2021.10.27既出)

久し振りに時間がたっぷり取れて、自身の古いブログを眺めている。2006年4月にスタートしているので、15年が経ったことになるが休まずにここまで来ることができたことに、少しだけ感慨がある。当初は、ヤフーのブログとしてスタートしたが、何年かしてヤフーがブログの運営を止めたときにこのアメーバーに移った。そのときの条件に、過去の(ヤフー時代の)ブログをそのまま移行できるということがあり、安心して移ったわけだが、ブログの文字によっては「文字化け」しているものもあって、必ずしもすべてがそのままではない。文字化け部分を修正できるものもある一方、当時の字句が甦って来なくて諦めたものもある。昨日、立て続けに掲げた父母に関するものはスタート(2006年)して間もなくのもので、その前後のブログを見てもいまより余ほど丁寧な気がする。よかったら、過去のものもご笑覧いただけたらと思う。

 

本の話である。今日アマゾンから届いたのは、稲葉 剛「貧困パンデミック(寝ている『公助』を叩き起こす)」(明石書店・1800円+税)と稲葉 剛・小林美穂子・和田静香 編「コロナ禍の東京を駆ける(緊急事態宣言下の困窮者支援日記)」(岩波書店・1900円+税)の2冊である。安部菅と続く9年間にわたる政治の無作為のために、貧困パンデミックともいえる現象が起こっている。とても先進国とも言えないほどのことが現実に起こっているわけだ。稲葉 剛「貧困パンデミック(寝ている『公助』を叩き起こす)」の帯に「コロナ禍で広がる生活困窮。自助も、共助も、限界だ。」とある。民生委員や福祉委員をやって来て、複数の生活保護受給者とも毎月面談した。私の娘より若い女性がふたりの幼児を抱え、コンビニに勤めながら不足部分を生活保護に頼ったのだけれど、毎月の面談が辛くなるほどの健気さで、彼女に生活保護から抜け出す日が来るのだろうかと危惧した。生活保護自体そう大した金額でもないが、それに頼らざるを得ない人が激増しているのにかかわらず、それ以前のセイフティーネットすらなかなか整えようとしない政府のありかた。そういう中で、ずっとこのような問題に取り組んできた稲葉 剛の新刊である「貧困パンデミック(寝ている『公助』を叩き起こす)」と、過去にも多くの発信を続けている彼の著書を1冊でも読んで貰えたらと思う。昨年に刊行の、「閉ざされた扉をこじ開ける(排除と貧困に抗うソーシャルアクション)」(朝日新書・790円+税)なども格好の1冊だと思う。もう1冊の、稲葉 剛・小林美穂子・和田静香 編「コロナ禍の東京を駆ける(緊急事態宣言下の困窮者支援日記)」は、稲葉らの活動を日記形式であり、その分リアルに伝わると思う。これら3冊をまず読んで欲しいと思う。何回も言うが、これらの状況は先進国で起こっていることとはとても思えない。

 

稲葉 剛「貧困パンデミック(寝ている『公助』を叩き起こす)」 2020年以降、生活困難な層が急速に拡大し、貧困の現場でも緊急事態が到来した。「誰も路頭に迷わせない」と立ち上がった著者たちの支援活動記録と政策への提言。

 感染症のパンデミック(世界的大流行)が日本に上陸したのと歩を合わせるように、それまで見えなかった国内の貧困が可視化され、拡大していった。コロナ禍は世界中の国々で貧困を深刻化させたが、日本でも「貧困パンデミック」とでも言うべき状況が生じたのである。本書はコロナ禍における「共助」の記録であると同時に、「公助」がいかに機能しなかったのか、を伝える記録にもなっている。私たち民間の支援者は、各々の限界を越えながら「共助」の活動を続け、同時に「公助」に本来の役割を果すように働きかけを続けてきた。その活動の成否は読者にお委ねしたい。(本書「はじめに」より)

 

稲葉 剛 「閉ざされた扉をこじ開ける(排除と貧困に抗うソーシャルアクション)」 誰も路頭に迷わせない!生活保護、住居問題、誰にでも忍び寄る「大人の貧困」最前線ルポ 現場から見た「2020以後」日本社会の行方

 社会から孤立し、行政にも支援団体にもつながれない「見えない人たち」が増えている。

 「大人の貧困は自己責任」という不寛容が日本社会を覆っている。日々の寝泊まりにも困り、生活に困窮している人々が自ら声をあげにくい風潮はますます強まっている。住居を喪失した人が失うのは、生活の基盤となる住まいだけではない。その果てにあるのは、生存そのものが脅かされる恐怖だ。20年以上、現場を見て歩いてきた社会活動家が「社会的に排除された側」からこの国を見つめ直す。

 住居を喪失させない!「生産性がない」と言わせない!生存は誰にも奪わせない!

 (目次) はじめに

      第1章 2020年東京五輪の陰で排除される人々

      第2章 世代を越えて拡大する住まいの貧困

      第3章 最後のセーフティーネットをめぐる攻防

      第4章 見えなくさせられた人たちとつながる

      おわりに

 

稲葉 剛・小林美穂子・和田静香 編「コロナ禍の東京を駆ける(緊急事態宣言下の困窮者支援日記)」 今日も誰かの緊急事態 あのとき、何が起こっていたのか?貴重なドキュメント

 見えないウィルスにビビりながら町を走り回り、助けを求める人々と出会い、泣き、行政相手に闘い、落ち込み、支援仲間たちに励ましてもらいながら、今日も出勤!

 「ステイホーム」する家がない。

 コロナ禍による派遣切りに遭い、ネットカフェなどの拠り所を失い、追い詰められ、助けを求める人たち。それに対する行政の「水際作戦」の横行。緊急事態宣言発出日以降の支援者の日記から浮かび上がる、福祉の貧困と、それに抗い、つながる人たち。この社会の実態を突きつける、心ゆさぶる貴重なドキュメント。

 貧困がものすごい勢いで拡大する中、福祉事務所や公的機関とのやり取りもストレスなことの方が多い毎日で白髪を増やし、髪振り乱して走り回りながら、それでも私はかすかな希望を見ている。コロナ禍が開けたパンドラの箱。コロナがこれまで誤魔化され、隠されてきた貧困を可視化させ、無関係と思っていた人々の身にも迫ることによって無視できなくさせた。……皆さん、ありがとうございます。これからです。(日記5月29日)

 

 

写真は、貝塚港で撮影する。