安岡章太郎「大世紀末サーカス」(朝日新聞社・1900円+税) | 野球少年のひとりごと

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土曜日であるが、わが家にバス道を隔てて立つ小学校が昨日コロナ感染で休校になり、児童たちが外出禁止になっていることもあり、街路に子供の姿は見えない。いつもの週末であれば目立つ、ジョギングやウォーキングをする若い人も心なし少ない気がする。わたしは遅く起き出したこともあり朝食は抜きで、午後からも書斎での読書くらいでゆったりと過している。いま読んでいる「安岡章太郎集」第8巻には、単行本刊行時の「流離譚」が収録されていて、幕末の天誅組の話に差し掛かったところであるが古文書が頻繁に出て来るので、読書のスピードは鈍る。ただ、全編を通じて(上下の2巻からなるので、まだ半分も読んでいないが)おそらく安岡の小説のなかでは一番ではないかなと考える。こういうのを読むと本格的な歴史小説もいいかなと思う。(森鴎外の全集も保有しているし)今日紹介する本も、安岡章太郎の歴史小説で「大世紀末サーカス」(朝日新聞社・1900円+税)と、関東の川に因んだ紀行集、「利根川・墨田川」(旺文社文庫・300円)の2冊のことを。「大世紀末サーカス」は、帯によれば「幕末維新の動乱の世、日本人の曲芸一座が世界への巡業の旅に出た-アメリカで大統領に謁見、パリでは万国博に参加、ロンドンで女王も御見物、さてスペインでは革命が…サーカスに託して、<同時代の歴史>を描く会心作。」とある。なかなか面白そうである。もう1冊の、「利根川・墨田川」は、わたしのように関東に無縁のものに取って、知らないことばかりの楽しい読み物になりそうである。

 

「大世紀末サーカス」 いま、私の手許に、岩城こと高野広八なるものの日記帳がある。…/広八は、足芸人浜碇定吉以下十七人の曲芸師をひきいて、慶應二年十月二十九日、横浜を出港、アメリカをへてヨーロッパの各地を巡業し、明治二年二月二十一日に帰国しており、これはその間、八百五十日にわたる日録なのである。/幕末期のその当時、脱藩の浪人志士や逃散した百姓、それに巡礼や抜け詣りにかこつけた旅人など、日本全土を流民や浮浪者の群れが渦巻いていたような印象があるが、この広八のように、東北の一山村の農家を飛び出して欧米諸国を漫遊した者の例を、私は知らない。だいたい広八が、どうしてそのような破天荒の旅に出ることになったのか…(「千年の終末」より)

 

「利根川・墨田川」 <なぜだろう、なぜ川の流れにひきつけられたりするのだろう>、<最初のひとシズク、そこをひと目見てみたい>……などとツブヤキながら、広遠な利根川流域を空陸から肌理こまかに踏査し、著者ならではの批評精神を横溢させたユニークな紀行エッセイ。

 

 

写真は、東山丘陵運動公園の遊歩道で撮影する。