
最初に勤めた会社ではじめて付いた上司がサラリーマンとしたら実に変わった人で、後年に至るまで少なからず影響を受けた。大変頭のいい人ではあったが瞬間湯沸かしみたいにすぐ興奮するところもあって、そこまで似てしまったところがある。もともと生真面目なわたしにとって、独特のチョイ悪ぶりなどは管理職になってから随分に役立った気がする。国内最大手の通販会社であり給料なども凄くよかったが、女性向け商品の企画という仕事がなかなか好きになれず4年で辞めてしまった。その後に出版社や広告代理店、絵の具のトップメーカーと経巡ることになったが、いつの時代もわたしの身の処し方を心配してくれた。出版社に辞表を出した日も、真っ直ぐ帰宅せずに呼び出して飲みに行ったくらいである。それと、わたしがクラシックを好きになる切っ掛けを作ってくれたのは大きい。30000枚ほどのCDやLPを保有し、おそらくオーディオ装置だけで1000万以上は掛けたくらいのオーディオ狂いでもある。その師匠ともいえる方から、クラシックに関して愛聴盤ともいえるもののリストをメールで送ってくれた。それに沿って、勿論わたしが保有している(CD、LPで2000枚、うちクラシックはその半分)ことが条件となるが、しばらく集中的に聴く予定である。
本の話である。午後にアマゾンから届いたのはいずれも村田晃嗣の著作で、「大統領の挫折(カーター政権の在韓米軍撤退政策)」(有斐閣・3600円+税)、「現代アメリカ外交の変容(レーガン、ブッシュからオバマへ)」(有斐閣・2400円+税)の2冊である。「大統領の挫折(カーター政権の在韓米軍撤退政策)」は、29人にインタビューを重ねた労作であり、1998年度アメリカ学会清水博賞、第21回サントリー学芸賞(政治・経済部門)受賞作の、村田晃嗣の出世作ともいうべきものである。もう1冊の、「現代アメリカ外交の変容(レーガン、ブッシュからオバマへ)」は、帯に「冷戦と『テロとの戦い』との、そして湾岸戦争とイラク戦争との『二重の戦間期』に、アメリカ外交はどう変容したか」『苦悩と希望』のドラマがここに」とある。「大統領の挫折(カーター政権の在韓米軍撤退政策)」が1998年の刊行、本書が2009年の刊行であるから村田晃嗣の学者としての成長ぶりを知ることができるかもしれない。
「大統領の挫折(カーター政権の在韓米軍撤退政策)」 カーターは、なぜ在韓米軍の「撤退」を企図し、惨めに挫折したのか。米大統領が選挙公約に掲げた対外政策が、いったん決定をみながら、国際情勢の変化や軍部・言論界・議会・世論などの反対により、大統領の意に反して挫折に至る過程を、ニクソン政権およびブッシュ政権による削減政策との比較をまじえて考察する。/撤退対策を、カーターの「素人外交の典型例」と等閑視するのではなく、米国の対韓防衛コミットメントに歴史的に内在するジレンマと政策決定過程上の問題とを結び付けながら再検討し、在韓米軍の去就が日本の安全保障に与える影響と意義を問う書。/新進気鋭の研究者が、未公刊史料や米政府関係者へのインタビュー、情報公開法に基づく史料などを利用して資料的制約を克服し、詳細に分析する。
(目次) 序 章 カーターの企図と挫折
第1章 歴史的背景
第2章 <先例>ニクソン政権による削減
第3章 撤退政策の胎動
第4章 撤退政策の動揺
第5章 撤退政策からの撤退
第6章 <学習>ブッシュ政権による削減とその中止
終 章 比較と展望
「現代アメリカ外交の変容(レーガン、ブッシュからオバマへ)」 「レーガン革命」とも称されるアメリカ国内政治の保守的再編と「強いアメリカ」を志向した外交によって、ロナルド・レーガン大統領は保守の時代を開拓した。父ブッシュとビル・クリントンの時代には、冷戦の終焉を受けて、アメリカは国際政治における圧倒的優越を手にする。ジョージ・W・ブッシュは自らをレーガンの後継者と位置づけるが、9.11テロ事件の衝撃でアフガニスタン、イラクへと大規模な軍事作戦にのめり込む。ブッシュ政権末期には、アメリカ発の世界金融危機も発生し、アメリカの軍事的・経済的優位が大きく揺らぐとともに、国内の保守勢力も大幅に後退した。いわば、レーガンの成功がブッシュの失敗を生み、ブッシュの挫折がバラク・オバマ大統領の登場を誘ったのである。/レーガン政権からオバマ政権の初期までの時期を対象に、国際的・国内的要因の中での大統領のリーダーシップや個性に重きを置いて、主要な外交上の出来事にふれつつ、現代アメリカ外交の変容を分析する。
(目次) 序 章 レーガンになりたかった男―二つの国葬
第1章 レーガンの長い影―ブッシュ外交への道
第2章 「二重の戦間期」―実父とその仇の時代
第3章 ブッシュ外交の胎動―過信と恐怖
第4章 ブッシュ外交の苦境
終 章 オバマ外交への道―歴史の呼びかけ
あとがき
引用参考文献