脳内がへしゃげるような圧迫を腹の中に感じながら、息を吐きつつ力を抜いて、いきり立つ運之丞を受け入れていく。苦しいというよりも、取り込みたい欲求の方が上回っていた。もっと奥へもっと奥へ・・。身体を貫かれてしまっても構わない。そんな気持ちで一杯なのだ。


「んぐぅぅうう・・・」


奥一杯まで、運之丞を飲み込むと身体と、入り口が軋んだ。何か月も受け入れてないそこには、もう少し時間がいった、しかし、そんなことが出来るはずがないのだ、こうやっている間にも、攻撃が始まるかもしれない、そんな状態の中の最初で最後の情事なのだ。お互いに躊躇などしていられないのだ。めい一杯突き入れた棍棒を、中から引出し、また突き入れる。快楽と言えるようなものではない。それでも、身体は覚えていた、あの、脳髄まで蝕むような甘味な刺激を。何度か、出し入れを繰り返されるうちに、時貞の顎が上がり、弓なりになってその感覚に溺れだす、口から洩れる吐息が、運之丞を追い上げてくる。目の前にある胸の小さな粒を口にくわえ舌で弾くと


「うっんん」


と甘い声が、小さく漏れた。首に巻かれる腕が、女子のように細くてしろい、美しい顔が快感に翻弄されて眉を寄せて声を殺して喘いでいる。この顔と姿を、佐々木が見ていたかと思うと嫉妬と、悔しさで、運之丞の動きが激しくなる。自分の心情が浅ましいと思いはするが、どうにも止められない。どんなことをしても守り通したかった、目の前で乱れるこの男を。美しく、知性にあふれ、ユーモアもあり、男も女も魅了する時貞を、佐々木に奪われたあの日以来、運之丞は自分の中に存在する、時貞を独占したい気持ちに気が付いた。ただ、友人としてなのか、それともなんなのか、よくわからず、今の今までいた。こうしたかったのだ、時貞と一つとなりたかったのだ、やっとその想いに気が付いたのは、先ほどの男女の交わりに他ならない。時貞の細い腰を押さえつけながら、下から打ち入れていくうちにとうとうその時がきた。


「時貞様・・・中に・・注ぎます。あああぁっ」


全ての想いが詰まった運之丞の液体が、時貞の中に注ぎ込まれた、体の中で弾ける運之丞を感じつつ、運之丞の唇に唇をまたも重ねた、打ち寄せる波の音と、潮の香りが二人を煽る、互いの想いが重なっていることに気が付いた時が、もう後がないとなれば、無我夢中に求める原動力となっていた。
時貞の中から引き抜こうとする運之丞を時貞が、止めた。


「まだ、儂の中にいろ。」


「ハハ、居てよろしければ。」


抜こうとした物を、納め直せばそれは新しい刺激となる。グチュッっと音をたてつつ滑り込んだ物を思わず締め付けると、それに張りが戻りだす。今度は時貞が動いてそれに張りを戻すようにしながら自らの中に突き入れた。


「んんっ、時貞様・・・。」


少し喘ぐ運之丞の声が、時貞の心に響くもっと運之丞の声が聴きたい、気持ちの良い顔をして欲しい、普通の恋愛感情のようなものが湧き出して、佐々木とはしたことないことを時貞は運之丞にしていた。


「運之丞・・儂が女であったらよかったかのう・・・。んんっ・・運之丞の子種を無駄にせずに済んだのにのう・・・。」


「時貞様が女であったら、抱きはしませぬ。尻に敷かれて手も足も出そうにないですから・・・。」


「なにやら複雑な気分じゃ・・・。」


「時貞様だから、このままで良いのです。一つ、佐々木殿とどのように繋がれおりましたか?私が、取って代わりとうございます。」


少し、赤くなった時貞が、自ら一度運之丞から降り、そして、背を向けた。


「佐々木殿は、この格好がお好みじゃった。そのせいか、儂も・・・。」


時貞の最後の言葉を聞かずに、運之丞は時貞に後ろから抱きしめ、中に押し入った。


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