「四郎殿・・・どうされる」


「企み・・など・・・あ・・あり・・はぁぁんあ・・ませ・・ぬ。・・。」


「儂がわからぬとでも思うたか?さぁ言え。」


企みなどないと喘ぎつつそう繰り返すだけで何も言えなかった。地獄だと時貞は感じた、どのくらい極みの一歩手前まで押し上げられて、手放されたかわからない、気が狂いそうになりかけた頃に


「嘘を申すな・・・ああ、くそっ、儂がもたなくなりそうじゃ・・ああ締まる・・。」


気が付けば、佐々木も顔を赤らめ限界ぎりぎりのような感じだ、時貞の身体は強い刺激が欲しい為に佐々木を締め付けていた、それが佐々木の冷静さを奪っているようだった。このまま、締め付ければこの地獄のような快楽から抜け出されるかもしれない。薄目を開けながら、佐々木を垣間見た。


「あああああ!!もう、ダメじゃ!!」


そう一言発すると、佐々木が強く揺さぶり始めた、間もなくなのであろう、それは時貞にとっても同じであり一気に極まって果ててしまった。時貞が果てたあと暫くしてから、佐々木が果てた。


「ふふっ、ふっわはははは!!、注ぎ込んだぞ儂を。お主は儂のものじゃ。儂のもの。」


そう言って、時貞の口を塞いだ、ねっとりと舌を絡ませられ、吸い上げられる。身体の中に打ち込んだ楔は抜くことをせず、それどころか、またも太く育って来ていた。


「まだじゃ、お主は儂を手玉に取るつもりであったな、じゃがな、儂はお主のようなこわっぱに手玉にとられるほど抜けてはおらぬ。儂はお主が欲しかったのじゃ。乗ったふりしてお主を儂の物にする算段だったのじゃ。それ、まだ、儂はやれるぞ。」


「私とて・・・はぁぁ・・さ・・さ・・き・・・さま・・あああ・・のんっく」


「儂のなんじゃ??企てを話す気になったか?」


「何も・・企ててなど・・ない・・ダメェ・・もう、もう・・・」


思わず、佐々木の腕に掴まりその腕に爪を立てていた。また、すぐに極みがそこに来ていた。人間の根源に由来する衝動は、理性を時に打ち破ることを身を以て体験することになった時貞は、体の欲する刺激の虜になってしまっていた。わずかに残った、意識が佐々木の発する言葉を逃さないで聞いていた。


「ちきしょう!!捕り物が無ければのう。まだ、まだ、欲しかとにのっくぅ・・いけん!!わいがおいば惑わすっけんが止まらん!!(ダメだ、お前が俺を惑わすから止まらない。)」


佐々木も、悩ましい時貞の様子を見ているうちに欲望に負けたらしく、武家言葉でなく、長崎の庶民の言葉に変わっていた。


「よか・・よか・・んんん・・朝の来たら、捕り物に行かんばならん。んん・・鳴滝で捕り物がある。ああっ!!」


聴きもしないのに自分からしゃべりだした。


「お主、帰りは女物の・・着物は・・やめよ。ひっ捕らえられるぞ・・・。」


時貞が落ちなかったら話す気などさらさらなかったのであろう。時貞を、この後も自分の相手をさせる為にも、この捕り物に捕えさせるわけにはいかないと、佐々木は考えたのだ。もしも、時貞が自分の物にならぬのなら、歌舞伎者として捕えられてもかまわぬと思うていたようだ。そこで、恩を着せてまぁ、このようなことに持ち込むつもりでもいたのだが。


「愛いのう、愛いのう」


揺さぶりながら、またも口づける。時貞は、朦朧としながらも、佐々木の先ほどの言葉は聞き逃さなかった。この男は、この時に口を滑らす可能性があることがわかったことが唯一の朗報だった。あとは、己の恥と対面することだけだった。


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