佐々木は口付けを交わすことなく、首筋に齧り付き軽く歯で皮膚を引っ張る、軽い痛みと程よい吸い上げは、時貞の身体の内部に燻る炎にすぐに油を注ぐ、丹念に首筋をたどりながら着物の前合わせから手を滑り込ませ、胸を撫でまわすが、突起には軽く触れるぐらいで、先ほどまでの刺激を与えてくれず、グズグズとした疼きが身体を這い回る。いっそのこと、鋭い刺激を与えてほしいと身を捩ってしまう。


「くっくっくっ・・・。儂もな、性急にしたいと思うがの。ゆるりと事を進める事での、四郎殿がどう狂われるかみとうてな。」


喘ぎきれずに、吐息をもらす時貞の気持ちを知ってか、そう佐々木が耳元で囁くのだ、それでも、若い佐々木は我慢が出来るわけもなく、帯を外すことなく無理やり前合わせを開いたのだ。赤紫の痣と、赤い褌(ふんどし)が目を引く。赤は、攻撃性を高める効果がある、そして、魔を除ける効果も、今は、興奮を高める効果になっていることは言うまでもない。ぎらぎらとした目が舐めるように身体を視姦する。佐々木は舌なめずりしながら赤紫の痣を指で強く押す、痛みで時貞の顔がゆがむとにやりと笑い、胸の突起をキュッっとつまみ上げた。


「んっあっ」


弓なりに身体がしなるほどの快感が身体を突き抜けるのだ、理性が外れた瞬間だった。佐々木は見抜いていた、時貞が何かの企みがあって自分の誘いに乗ったことぐらい、ならば、その企みさえ忘れ去るように快楽の坩堝に叩き落としてやろうと考えていた。自分より若い少年ごときに振り回されるほど甘くはないと、時貞の身体に染み込ませるつもりなのだ。


「四郎殿、気持ちよいであろう。もっと声を上げい。もっと狂われい。」


それからは佐々木の思うつぼだった。直ぐに絶頂を向かえることになるも、そこで終わるはずがなく、打ち身痕の上に、もう一度吸い痕をつけ、萎えかけた高ぶりを手でやんわりと掴まれると、元の太さに戻され、そして、後ろの菊のつぼみに指をもぐり込まされ中をグリグリと弄り始めた、一度味わった場所は敏感になっている。そして、そこからもたらされる疼きは自制をはぎ取る。時貞の口からは、喘ぎ声が止まることはことなく、身体は刺激を欲して貪欲にその行為を求め続けた。ついに佐々木の物が時貞の身体の中に入って来た。


「んんんん!!ああぁぁ・・・。んぐっあぁ」


突き立てられるように、半ば強引に押し込まれるそれに、声が上がる、悲鳴にならないだけましだと、靄のかかる頭の中でそう呟いていた。
畳に爪を立てながら、圧迫に耐える姿は、朱をはいて色気が上がる。白い喉は、何度も唾を飲み込むために、喉仏が上下する。力を抜かせる為に、佐々木が立ち上がっている時貞のものに、刺激を与えるその度に、快感と、圧迫が交互に押し寄せた。全てを中に収めると、佐々木が歓喜の声で囁いた。


「四郎殿がここまで積極的になってくれるとは、ここに、滑りやすうなるように何か塗られてたであろう。お蔭で儂の物も引き攣らずにすんだわ。ほら、儂の全てが四郎殿の中に差し込まれてるのじゃ。たまらぬのう。これで、少し動いてやろうか・・・。それとも、お主の企みを吐くまで、果てる寸でで止めてやろうか?」


ぼやける頭の中の澄んだ場所が、危険を知らせていた。ばれていた、正直に言えるわけもなく、どうごまかすか、それも顔色一つ変えずに行えるか、今の状態では何も考え付かなかった。考えようとすれば、佐々木が揺するのだ、その度に内側から沸き起こる欲求に遮られ、顎を仰け反らせるだけになるのだ。


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