『そんなに検査しないといけないですか?』
獣医になり約26年になりますがたまに飼い主様にこのように言われることがあります
人であれば自分の口で症状を事細かく説明することができるのでそのポイントに絞って診察・検査できると思いますが、動物の場合は当たり前ですがそれが出来ません。
いつもに比べてどこがどのくらいしんどいか、どう様子が違うのか、診察に来ていただいた短時間で全てを把握するのは正直言うと難しいです。
また、同じ症状一つとっても飼い主様によって説明の仕方も様々です。
でもこれは動物の医療では仕方のない事かと考えています。
言葉にできない以上どこがどうしんどいのか確実に伝えることは出来ないのですから‥‥
私個人としてはだから早期の検査が必要だと考えています
検査もどこが悪いかわかっていればピンポイントでそこを検査することができますが、例えば【食べない】【吐く】【下痢してる】といった症状は胃腸炎でも、急性胆管炎でも、急性肝炎でも・急性膵炎でも、異物の誤食でも、腫瘍でも、子宮や卵巣の病気でも、その他の原因でも同じような症状が現れます。
それだけに疑わしいと感じた病気をある程度範囲を広げて検査をして除外していくことが大切なのです
たとえ血液検査で異常がなくてもそれによって血液検査に表れる病気の可能性は低いとわかることがすごく大切です。
それにもう一つ。上記のような症状があったとしても一般的な身体検査で目立つ異常がない場合は、点滴や胃腸薬などの対象治療にて経過観察すれば10頭中8~9頭はおそらく治ると思います。
ただ残りの1~2頭はその経過観察中に状態が悪化したり残念ながら手遅れになる場合もあるのが現実です
なかには表に現れている症状はそれ程ひどくないのに検査によって緊急で手術が必要と分かるケースや特別な治療薬が必要と分かるケースもあります
その1~2頭の動物たちを見落とさないように、早期に見つけ適切な治療をするためにも早期の検査が必要なのです。
このブログを書いている最中でも早くに検査してよかったと思える症例が何頭も頭に浮かぶ上がりますし、逆に検査の同意を得られず手遅れになった動物たちの事も思い出します
ただ、飼い主様にも様々な事情がある方もおられますので
できる限りご理解いただけるように説明した上で検査したり
全ての検査が難しくても一部だけでも検査を受けていただけるように努めてまいります。
少し熱くなってしまいましたがどんな病気であれやはり
早期発見早期治療が大切です。
早期の精密検査にご理解いただけると幸いです
※赤い数値が異常値です。
左右の検査結果共に症状は食欲なし・数回の嘔吐だけ。
左のワンちゃんは血液検査に異常なく対症治療のみで回復。
右のワンちゃんはその夜に緊急手術のため紹介。今は元気に他の病気の治療のため時々通院されています。
右の結果のワンちゃんの方がやや触診でお腹触るのを嫌がっていましたが検査せずにこれだけの異常値を把握するのは難しい症例です。
こういった状態を確実に判断するために早期の検査が必要になります。