夜になった。アスカとタッカールのふたりは、猫の隠れ家でいろいろな話をしてすっかり仲良くなった気持ちになった。村の人たちも心配しているだろうし、そろそろ帰ろう。結局アスカはきらきらの石をアヤちゃんへのプレゼントとして持って帰ることにした。「ごめんね、猫さん。このきれいな石を2つちょうだいね」猫は「にゃぁ~ん」と返事をした。

 きらきら石は、よく見ると透明な石の中心に猫の目のような鋭い黒色が入っており格好いい。「まるでヒョウの目みたいね」アスカはそう言ってタッカールの目をのぞきこんだ。「なんとなく、似てる」タッカールは照れて目をそらした。

 「記念に写真を撮ろう」タッカールは言い、ふたりは部屋に飾ってある世界地図の前で自撮りをした。手には冒険の証であるきらきらの石を持って。タッカールには予感があった。きっとふたりで後ろの世界地図みたいな大きな世界を冒険することになる。前から世界を旅したいと思っていた。その旅にアスカがいたらどれだけいいだろう。

 夜の暗がりの中、ふたりはこっそり飛鳥村へと戻ってきた。アスカの父は村の村長だ。村長宅のそばには聖なる泉があり、泉の底には聖なる石が眠っている。アスカは聖なる泉の石に向かって「ただいま戻りました」と告げる。アスカの眼前にぽわっと青い小さな光がすこしのあいだ見えた。聖なる石が返事をしてくれたのだ。アスカは家の中に入る。タッカールとはここで一度お別れだ。

 アスカの父であるルピナスは娘を叱りつけそうになるのをこらえて娘を受け入れた。しかし怖い目でアスカを見ている。アスカは申し訳なさそうにきらきらの石をとりだして見せた。「これをアヤちゃんにあげようと思ったの」ルピーヌスは仕方ない、という様子でため息をついた。

 どかどか、という足音と共に屋敷の奥から小さな怪獣が走ってくる。「リザルド!」アスカは怪獣に駆け寄る。村長宅では『風の火とかげ』とよばれる怪獣をペットとして飼っていた。リザルドのしっぽには火がついている。リザルドがご主人さまの帰宅を喜んでくれた。

 「聖なる石には挨拶してきたかね」ルピナスが問う。「はい、してきました」村長宅のちかくにある聖なる泉の底にある石は、太古の時代を生きた恐竜の卵であると云われている。太古の恐竜の卵の中に宿る恐竜の赤ちゃんの霊が飛鳥村を守護してくれているのだ。ルピナスはリザルドを見る。

 アスカが無事に戻ったこと、そしてアヤが生まれたことを祝して今夜は盛大に宴会がひらかれた。賑やかな酒盛りが開催される。アスカはそこで踊りを披露した。アスカが踊ると酒盛りの一座は静かになり、みんなその踊りに見惚れるのだった。アスカの踊りは美しく目を引くものであり、みんなが注目して褒める。アスカの踊りは繊細で優美であり、踊り子の先生もその才を高く買っている。アスカは楽しそうに踊った。

 宴会がひとしおを迎えた。村長の屋敷の広間では酒に酔った男たちが腹を出して眠っている。平和な村だ。ふと、アスカが窓の外を見ると、そこにはタッカールがいた。「そんなところにいたの」アスカは外に出てタッカールと合流した。

 ふたりは外に出て、聖なる泉のそばで星空を見上げる。空は満天の星空だった。「きらきらの石みたい」アスカが言う。タッカールがなんと言おうかと考えていると「あっ、流れ星!」アスカが指さした先に一筋の流れ星がきれいに落ちて行った。アスカは無邪気に「流れ星には赤ちゃんがのってるって話を聞いたことがあるわ」と言った。タッカールはだまって頬を赤くした。