2015年3月26日

民主党・無所属クラブ の奥野 総一郎です。 
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました「放送法第70条2項の規定に基づき、承認を求めるの件」(平成27年度NHK予算)につきまして、不承認の立場から討論を行います。

 冒頭、昨日の総務委員会審議において、強行採決が行われたことに強く抗議を致します。与党が、審議不十分にもかかわらず、籾井会長の問題答弁を防ぐため年度内承認を急ぎ、桝屋敬悟総務委員長が、我が党の強い反対にもかかわらず、職権で定例日外に委員会採決を決定したものです。与党の諸君、全会一致を原則とするNHK予算審議の歴史において、おそらく初めての不正常な採決をもたらす原因となった、籾井会長をまだかばうのですか。

 平成27年度NHK予算については、国際放送予算の大幅な増額、インターネットの同時再送信への取組みなど、評価できる部分も含まれています。しかし、籾井会長の一連の言動で公共放送としてのNHKの信頼が著しく傷ついていることから、この会長の下で、①日本の姿を国際社会に正しく伝えることができるのか、また、②同時再送信の前提となる受信料負担をインターネット利用者に求めることができるのか、極めて疑問であります。したがって、平成27年度NHK予算について、到底承認するわけには参りません。以下その理由についてくわしく述べます。

 ホームページに「NHKは、政府から独立して 受信料によって運営され、公共の福祉と文化の向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体であり、今後とも公共放送としての責任と自覚を持って、その役割を果た」すとうたわれています。NHKは、国営放送でもなく、民放のような営利放送でもない、公共放送なのです。

 しかし、籾井会長の下、国営放送と公共放送の重要な違いである「政府からの独立」に疑義が生じています。「政府が右と言っているものを我々が左と言う訳には行かないと」という昨年1月の就任会見での発言、「「従軍慰安婦の問題」について「政府のスタンス」が見えなければ放送できない」、という今年2月の会見での発言は、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」という放送法第三条の規定に違反するのではないでしょうか。
 しかも、こうした会長の発言をさらに現場が忖度をして、「NHKの職員といえどもサラリーマン。忖度は企業や組織には普遍的に存在している」と番組編集権をもつ放送総局長が会見で発言する始末です。爆笑問題が政治ネタを没にされるなど番組にも実際に影響があらわれており、「政治的に公平であること」「意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」という放送法4条の規定をNHKが遵守しなくなったのではないかとの指摘が多数あります。

 また、「政府からの独立」を担保するための「受信料」も、籾井会長自身の言動で、今、その制度への信頼がゆらいでいます。受信料は、義務ではなく、あくまで民法上の契約に基づき、国民に自発的に支払って頂いている「特殊な負担金」です。放送法第73条でNHKの業務の遂行以外の目的に支出できないことになっている他、当然、無駄遣いは許されません。こうした原則が揺らげば、受信料の不払いが増え、NHKの存立が危うくなることは、過去の不祥事の例が証明しています。
先般、籾井会長が私用でゴルフに行く際のハイヤーをNHKが業務用として手配し、かつ受信料でその料金を立て替え払いしていた問題が発覚いたしました。この問題についてNHK監査委員会が行った調査は、具体的な証拠を示さないまま、籾井会長が「当初から当該ハイヤー代金を自ら負担する意思を示して」いたと結論付け、「秘書室の対応はずさん」として秘書室の業務を統括する副会長の監督責任のみを問うています。籾井会長の責任は全く問われないのでしょうか。さらに、今回のハイヤー使用について「私用目的でも、必要な身柄の安全などを目的としていた以上、業務遂行との関連がある」とし、受信料の立替払いを認めています。これでは、私用のハイヤー・タクシー利用について受信料が支出できることに監査委員会がお墨付きを与えたことになります。籾井会長を守るため受信料の業務目的以外の使用を禁じた放送法第73条の規定を組織ぐるみで破ろうというのでしょうか。「杜撰」なのは監査委員会の調査の方であります。
 また、NHK関連団体ガバナンス調査委員会にも、受信料の適切な支出の観点から問題があります。この調査については、①随意契約によるもので委員の選定過程が不透明、②費用について籾井会長が数千万円程度と認めているが、具体的な金額については非公開、③成果物である報告書は、国会の求めで一部公開されたが、一般には全体が非公開のままであり、活用されているかどうかも不明確、であります。これらの疑問についても、NHKは「個別の契約に関することであり、その公表については控えたい」とのみ回答するだけで、会長を守ろうとするためか、真摯に対応しようとはしません。
こうした放送法違反といえるような、いい加減な支出が増えれば、受信料制度への国民の信頼が揺らぎ、不払いがふえて再びNHKの存立の基盤が揺らぐことが懸念されます。

 これらの例をみれば、組織としてガバナンスが機能していないことは明らかです。公然と忖度を認める役員、お手盛りの調査を認める監査委員会。組織の範とならねばならない会長が、自らコンプライアンス違反を犯すのですから当然の結果ではないでしょうか。NHK会長の資格要件の第一番目は「NHKの公共放送としての使命を充分に理解している」ことであります。籾井会長がこの資格を満たしているとは到底思えません。経営委員会は、一刻も早く辞任勧告を行うべきです。
さらに今回、経営委員会は「籾井会長以下執行部には、事態を一刻も早く収拾し、この経営計画の初年度である、平成27年度のNHKの収支予算、事業計画が、国会で、全会一致での承認を得られるよう、最大限の努力をして頂きたい」との申し入れを行っています。2年連続で全会一致の原則が崩れた今、全会一致に向けての最大限の努力があったといえるでしょうか。経営委員会は放送法第55条第一項の「職務上義務違反」として会長を罷免すべきです。

 NHK予算承認の、全会一致の慣行は、すべての政党に支持される「政治的な公平性」を求められている、まさに公共放送故のものです。国営放送でも、おれさまのNHKでもなく、まさに「皆さま」のNHKだからこそ、全会一致が求められているのです。

 以上述べてきたように公共放送の使命を理解できていない、籾井会長の下での予算には断固反対します。これが、平成27年度NHK予算を不承認とする理由です。

 最後に、民主党は、こうしたNHKのガバナンスに対する危機に対して、国民の知る権利、公共放送の自律性を守るため、①外部理事の導入や理事会での決議の導入といったNHK理事会の役割の強化、②監査委員の理事会への出席を義務化し、その審議状況等について逐次経営委員会に報告する監査機能の強化、③NHK役員人事の透明性や中立性の確保をはじめとする、「放送法の一部を改正する法律案」を既に国会に提出しております。今後、このようなお粗末な事態が生じないようにするため、議員各位におかれましては、早期成立にご協力いただくよう申し上げ、私の討論とさせていただきます。