これまで安倍政権が高い支持を受けて来たのは、アベノミクスで景気が回復するとの期待が大きかったためと思われます。しかし、期待したほど回復していないのではないでしょうか。内閣支持率が下がっている原因は、景気にあると思います。



実質賃金は低下

 厚生労働省が公表した直近2014年5月の実質賃金指数(現金給与総額に物価変動の影響を加味したもの)は、3.8%減、11カ月続で前年を下回るとともに、下げ幅は、2009年12月(同4.3%減)以来、つまり、リーマンショックの当時と変わらないものでした。円安などで物価は上がっていますがそれに見合う賃金の上昇がない、暮らし向きはよくなっていないということです。 
アベノミクスの論理は、円安で輸出が増えることで国内生産が増加、設備投資が増える、そこから波及して賃金の上昇にもつながるというものでした。ところが、現実には輸出は伸びておらず(数量ベースでは微減)、景気の回復に寄与していません。
原因は、製造業の海外移転による空洞化と競争力の低下にあります。前者が予想以上に進んでいたこと、また競争力についてはかつては自動車産業と並んで日本の稼ぎ頭であった電子産業は2013年から貿易収支が赤字に転じたことなどが特筆されます。特に赤字が大きいのはコンピューター関連装置と通信機器で、2013 年の赤字額はそれぞれ、1兆6450億円と2兆870億円。合計すれば赤字額は3兆7000億円を超え、これは貿易収支の赤字拡大の原因として真っ先にあげられる、原発停止に伴う天然ガスの輸入量の増加額、約3兆6000億円という試算を上回るものです。



貿易収支は過去最大の赤字

 こうした要因で、2014年上半期の貿易収支(原数値)は7兆5984億円の赤字で、半期ベースでは現行統計が始まった1979年以降で最大を記録しました。戦後一貫して貿易立国で経済を支えてきた日本は今、大きな転換点にたっていると言えます。これに対し政府は、法人税減税を考えているようですが、効果は疑問です。税率だけを見ても、政府の案のとおり6%下げ29%にしたとしても、中国や韓国の24~25%、シンガポールの17%にかないません。しかもこの減税にかかる3兆円あまりの財源を中小企業に負担をさせようとしています。私の総務委員会の質問に対し新藤総務大臣は「外形標準課税の拡充につきましても、総務省とすれば、~与党の税調プロセス、そして、政府内のさまざまな検討の中でしっかりとした議論をしていただきたいし、我々もそれに参加していきたい、このように考えております。」と赤字の法人への課税をはっきりと認めています。これは景気には逆効果です。



これまでの延長ではない改革を

 今我が国は困難な状況に置かれています。政府が第一に取り組むべきは、「景気対策」「日本の構造改革」ではないでしょうか。旧来の政策の延長線ではもはや対処できなくなっています。TPPや日EUのEPAをリスクをとっても日本主導でまとめる、また、イノベーションを担う人材が育つよう教育改革を進める、エネルギー・規制改革などによる成長戦略、道州制などの地方分権など思い切った改革を進めて、競争力を取り戻さなければなりません。引き続き改革を訴えて参ります。