菊の香に酔う秋夜――唐の詩人が愛した「山と酒」に思いを馳せて
皆様、こんにちは。
いよいよ秋も深まり、朝晩の空気に凛とした冷たさが混じる季節となりましたね。
街を歩けば、どこからともなく菊の花の清々しい香りが漂い、秋の深まりを肌で感じる今日この頃です。
こんな夜は、部屋の灯りを少し落として、一人静かに盃を傾けたくなりませんか?
菊の香りと「重陽」の風流
古来より、日本では秋になると菊の花を酒に浮かべた「菊花酒(きくかシュ)」を味わい、無病息災や長寿を願う風習がありました。いわゆる「重陽(ちょうよう)の節句」のたしなみです。
杯の中に浮かぶ一片の黄色い花びら。
一口含むと、酒の芳醇な旨味とともに、菊花の気品ある香りが鼻を抜けていきます。
大勢で賑やかに飲むお酒も楽しいものですが、こうして秋の香りを相手に一人で静かに味わうお酒には、何にも代えがたい深みと情趣がありますよね。
詩仙・李白が謳った「山と酌み交わす」心境
秋のひとり酒を楽しんでいると、ふと唐代の詩人・李白(りはく)の有名で美しい詩が頭をよぎります。
「独坐敬亭山(独り敬亭山に坐す)」
衆鳥 高く飛んで尽き
孤雲 独り去って閑なり
相看て両に厭わざるは
只 敬亭山有るのみ
(鳥たちは高く飛び去り、一ひらの雲も静かに消えていく。いくら見つめ合っていても互いに飽きることがないのは、ただこの敬亭山(けいていざん)と私だけだ)

また、李白は山中で友と酒を汲み交わし、「我酔うて眠らんと欲す、卿(きみ)しばらく去れ」と詠んだ自由人でもありました。

静寂に包まれた山を唯一の友とし、あるいは雄大な自然そのものを相手に酒を酌み交わす――。
余計な言葉はいらない。自然と自分が一体となり、ただそこに存在する時間を楽しむ。なんという贅沢で、誇り高い心境でしょうか。
現代の私たちが楽しむ「極上のひとり酒」
忙しい毎日を送る現代の私たちにとっても、この「山と向き合うような静かな時間」はとても大切なのかもしれません。
今夜は、お気に入りの器に美味しいお酒を注ぎ、季節の菊の香りを添えてみませんか?
風が窓を揺らす音を聴きながら、自分の心と静かに向き合う時間。
遠い昔、唐の詩人が山を相手に酒を楽しんだように、私たちもまた、秋という季節そのものを肴にして盃を重ねる……。そんな風流な秋の夜を過ごしてみてはいかがでしょうか。
皆様もどうぞ、心地よい秋の夜長をお楽しみくださいね。

