(第11話)
(叔父:昇市の家)
しばらく中座した昇市が、戻ってきた。何やら、持っている。
「浩太。行きたい予備校は、何処の?」
「・・・はい、Y予備校です」
「家から、通うのか?」
「はい、通います。一所懸命、勉強します。だから、叔父さんよろしくお願いします」
母と一緒に、再び頭を下げた。
「・・・俺は、大学に行く頭は、なかった」
昇市が、静かに話し始める。
「お前のお母さんは中卒。お前のお父さんも中卒。そして俺も中卒で、百姓をやるしかなかった。学歴がないことで、いろいろ、悔しい思いもしたよ。」
神妙な面持ちで浩太は耳を傾けた。
「浩太。お前は幸い、大学に行くだけの頭はあるようだな。あとは努力が足りないだけか?高校に入った時は、トップクラスだったって話は本当か」
(う、それを言われると)
「・・・まあ、過去のことですけど」
「まあ、いい」
昇市は持っていた封筒を浩太に差し出した。
「・・・・30万、でいいのか。出してやる」
浩太は額を座布団にこすりつけた。
「ありがとうございます、昇市おじさん!俺、絶対来年、受かりますから!明日から新聞配達して、このお金、返しますから!」
「・・・・兄さん、ホント申し訳ない。うちの人が頑固なもので、迷惑かけちゃって」
母も同じように頭を下げた。
「・・・・学生の本分は、勉強だあ。今のうちだ、しっかり勉強しなさい。お金なんて、天下回りものだ、どうにでもなる。うちは裕福ではないけど、お前がどうしても大学に行きたい、そのために予備校に行きたいってことだったら、それくらいのお金は出せる」
(ありがとうございます、ありがとうございます)
浩太は涙をこらえながら、まだ頭を下げている。
「ただし、浩太。本気で1年、頑張ってみろ。いいな。俺からの条件は、それだけだ。新聞配達もいいけど、まずは勉強しろ。いいな」
「・・・はい」
浩太のその言葉に、ウソはなかった。
その時には。