7月末に出演させていただいたこちらの演奏会。



使用した楽器はこちら。

リハーサルの写真より。


ドレスデンのハインリヒ・グレンザー(1764-1813)という製作家の楽器のコピーで、12個キーが付いています。

かの有名なクヴァンツも書いているように、キーが増えれば増えるほど、トラブルも増えるのでして…(ちなみに12個というのは古典時代の楽器としてはかなり多い方)。


吹いたのはこちら。


C.M.v.ヴェーバー:

クラリネットとクラヴィーアのための変奏曲 変ロ長調 作品33

協奏的大二重奏曲 変ホ長調 作品48。


この2曲を演奏する上では、右手で操作する2つのトリルキーは必要にならなかったので、そのトーンホールにはフタをしていました。というわけで実質10キー。

 

一方、モーツァルトのクラリネット五重奏曲 K.581(大ソナタとして1809年に出版されたクラリネットとクラヴィーア編曲版)は、A管のバセットクラリネットを使いました。



これは、ウィーンの宮廷の楽器製作家テオドール・ロッツが、アントン・シュタートラーやモーツァルトと協力して作ったであろう楽器。
この楽器のオリジナルは見つかっておらず、モーツァルト時代のコンサートプログラムのイラストなどを参考に作られたもの。


基本構造は5キーのクラリネットと同じですが、バセットクラリネットは、右手親指のところに低音を操るキーが4つついています。

ということは普通のクラリネットより4つ低い音が出る…と。

ちょっと待った、それだけではないのです!

もうひとつ、上のイラストの左側のL字型の部分に、よーく見ると穴が見えますでしょ!?

下のイラストは、デフォルメして私が「かるた風」に書いてみたもの。赤い矢印のところ。



これをヨイッと脚でふさぐと、下のシ(実音ソ♯)がでるんです。ぬるーっとゆっくりとふさぐと、グリッサンドになります。やりませんけど。


これ、多分、ロッツさんはあとでキーを付けるつもりだったんじゃないかなーと思っています。



面白いカタチですよね😆でも、ベルがこうなっていることで、音色がだいぶまろやかになるのです。

そうそう、それと、この日はアンコールとして
レオポルト・モーツァルトのクラリ…ネットではなくて、クラリ…ーノコンチェルトを演奏しました。

これは、D管のバロッククラリネットで吹きました!と言いたいところですが、今回は、古典時代のC管で。

なんというか、レオポルト・モーツァルトは私にとって、普段ほとんど演奏の機会がない時代の人。大好きなモーツァルトを育て上げた、厳しいお父さんのイメージ。ドキドキ。


演奏会直前に改めてレオポルトの本を読んだら「あれはダメこれはダメ」「こんな奏者は最悪である」みたいなことが沢山書いてあり、ちょっとびびってしまいました。

しかし、そこは腹をくくって。

カデンツはこの日の演奏会用に、その日の演奏曲のモチーフを少しずつ入れて、かつ「クラリーノ」の特徴を活かせるように作りました。



というわけで、モーツァルトとゆかりのある作曲家をテーマにしているこのシリーズ、次はレオポルト ・モーツァルトです!

メヌエット・デア・フリューゲルさんの素晴らしい企画に出演させていただき、一生物の経験でした。小倉さんのピアノは、なんというか、魔法のようだったなぁ…そして12月で40回を迎えられるこのシリーズ、お客様から伝わってくる音楽への愛も並大抵ではなかったです💞



他にも感じたことはたくさーんありますが…

長くなったので今日はこの辺で…
お読み下さってありがとうございます。