林檎(りんご) Apple その2 | 香りの散歩みち

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「りんご」は、遅くとも平安時代には中国から日本へ伝来した。


930年代に成立した『和名類聚抄』に「りんご」が記述されている。


但し、この本には「りんご」は「利宇古宇」(「リウコウ」あるいは「リウゴウ」と読む)と表記されている。


もともと、中国では「林檎(リンキン)」あるいは「来檎(ライキン)」と呼ばれていた。


中国の書物『本草綱目』(1596年出版)には、


「林檎一名来檎、言味甘熟則来林也」


(林檎、またの名を来檎。味は甘く熟すので、すなわち、檎(=鳥 トリ)が(林に)やって来る)


と書かれている。


「林檎」は「リンキン」あるいは「リンゴン」と発音された。檎は呉音では「ゴン」である。


「リンゴン」に漢字の「利宇古宇」が当てられ、後に、「利牟古」(リムゴ)と呼ばれる事もあった。


しかし、当時の「りんご」は「和りんご」であり、幕末に日本へ伝来した西洋種(西洋りんご)とは、外観や味が大きく違っていた。(「和りんご」は非常に小さい)


中国語では、「りんご」は「苹果(ピンゴウ)」とも呼ばれている。


しかし、この言葉は、19世紀頃に使われ始めたので、


「林檎」とは種が違うようだ。


当時の外来種、つまり「西洋りんご」が「苹果(ピンゴウ)」なのだと思われる。


日本でも、1872年にアメリカから北海道開拓使が75品種を輸入し、本格的に「西洋りんご」が栽培されるようになった。


当時はこれに「苹果」の文字を当てたが、次第に、「和りんご」も「西洋りんご」も呼び名は「林檎」に統一された。


宮沢賢治は、その童話に出て来る「りんご」に「苹果」の文字を当てている。

(執筆協力 中島 透)