野生のジャガイモはソラニンやチャコニンなど多量の有毒成分を含んでいる。
これは、自分たちの繁殖のため動物たちに食べられないようにする「ジャガイモの知恵」だと言える。
「人類の知恵」は、食べられない物を食べられるようにする。
栽培種のジャガイモは毒性を大きく減少させるよう改良して来た。
しかし、現代でも、ジャガイモに毒性は残っている。
だから、芽や緑色の皮は必ず取り除いて食べる必要がある。
16世紀に伝搬したものの、ジャガイモはヨーロッパでなかなか普及しなかった。
これはジャガイモの知識が不足し、
「芽や果実も食用」などと書かれた料理書が出たせいで、
多量の芽を食べて死亡する人が出たり、
見た目がグロテスクな所から「悪魔の植物」と呼ばれたり、
聖書の記述に無いなどの理由により、
全くの不人気で普及しなかった。
その不人気を変えたのは、ヨーロッパ各地に起きた戦争や飢饉である。
戦争で多くの耕地が全滅した。
天候不順により小麦の凶作がしばしば訪れた。
ジャガイモは寒冷地・高地や硬く痩せた土地でも栽培出来る為、
小麦など穀物の代用として普及した。
だから、ジャガイモは「貧者のパン」とも呼ばれる。
しかし、アイルランドのように、あまりにジャガイモに頼り過ぎ、
ジャガイモ単作に走った為、
「ジャガイモ疫病」による「ジャガイモ大飢饉」に見舞われた国もある。
(執筆協力 中島 透)