今日は、大阪・朝日新聞社ビルで開かれた阿刀田高さんの講演『松本清張を推理する』に行ってきました。朝日カルチャーセンターの特別講演で、5月に予約したもの。月日は早い…。
阿刀田さん自身が直木賞を受賞する大作家ですが、松本清張さんの大ファン、一大読者。今回、清張生誕100年を記念して朝日新書で同名の本を出すこともあり、今回の講演が企画されたようです。
いわゆる出版記念講演みたいなもの。
開場前からフロアには人生の大先輩たちが集合。平均年齢70歳くらい。かろうじて「30代かなあ…」と思う人が数人。100人くらいの参加者の大部分は阿刀田さんと同輩の感じでした。
作家という視点から、松本清張がどんなところに視点を置いて小説を書いたのか、どんな手法がこっそり使われているのかなどのお話を1時間半。
面白可笑しく話してくださるので、その時間があっという間。当たり前ながら、自分が作っていた「清張像」とはまた違った見方。
川端康成や太宰治とも比べながら、松本清張がずっと庶民の視点を忘れずに書き続けていた意義を強調されていました。
探偵小説と推理小説の違いを明確に語られていたのが印象に残ります。清張前と清張後の話の作り方がどう変わったのか。自分は清張後のタイプに馴染んできたのですが、作品が発表された当初は斬新だったんでしょうねえ。
清張さん自身は、高等小学校を卒業して、丁稚のような仕事を経て、見習いのように朝日新聞社に入社。広告デザインの仕事をしながら正社員になって、作家デビューは42歳。
帝大出の人たちに囲まれる職場が清張さんにとってよかったのかどうかは微妙、と阿刀田さんが朝日新聞のビルの中でおっしゃっていました(笑) おそらく想像以上の嫌な思いをしながらのお勤め。でもその20年以上、ためにためたものが人生の後半で爆発したんでしょうね。
『或る「小倉日記」伝』の地道に作業をしてもなかなか認められない主人公は、清張さん自身の鬱屈したものが全部託されていて、そのパワーがデビュー作ともなり、他の作品とは違う映えを生んだのだろうということでした。
講演後、著作の販売&サイン会も実施。自分の前に並んだ60代とおぼしき女性2人が「学生の時からファンだったのよ~」と乙女のようにはしゃいでいて、ウキウキした気持ちを分けていただきました♪
熱い60代の後にサバサバした30代が並んでしまってすみません…。
松本清張関連でへえと思ったのはこちら。
↓
清張ミステリーと昭和三十年代 (文春新書)
アマゾンの評価はそんなに高くないんですが(笑)、昭和30年代をリアルタイムでは知らない世代にとっては理解の助けになると思います。
アマゾンの松本清張作品上位3作はこちら↓↓
アマゾンの説明によると「清張ファンを自認する宮部みゆきが巨匠の傑作短篇を選びに選び、全てに解説を付けた。上巻はミステリ・デビュー作「恐喝者」の他、宮部いち押しの名作「一年半待て」「地方紙を買う女」「理外の理」や、「或る『小倉日記』伝」「削除の復元」の鴎外もの、斬新なアイデアで書かれた「捜査圏外の条件」、画壇の裏面を描く「真贋の森」等を収録。」
講演でもそのほか『日本の黒い霧』『昭和史発掘』などの話が。
阿刀田さんがおすすめの短編として『潜在光景』を挙げられていて、それは「自分が書くべきだったものではないか」という思いもあるそう。そんな話も生ならではですねえ。
いろいろ読みたくなってきました! でも文庫本とかみんな実家に置いてあるんですよねえ…。また買っちゃおうかな。
↓↓
松本清張を推理する (朝日新書)