ウメ

 

 きのう病院の待合室で待っていたとき 

 壁掛けのテレビには

 ピアニストが演奏している様子が映っていました。

 

 そのピアニストはまだ若くて

 指もよく動いて 何かの賞をとったということでした。

 わたしはチラチラ見る程度でした。

 

 演奏が終わると、わたしの斜め前にいたご婦人が

 ひざの上で、小さく静かに手をたたいていたのです。

 テレビの中の奏者をねぎらうように。

 

 病院は不安の塊のような場所です。

 待っている人たちは みんな無言です。

 そんな場所で久々に 

 うつくしい光景を見ることができました。