新聞歌壇に入選していた作品です
先月に辞めた人らのゴム印が
くくられたまま棚に置かれる
<横浜市 吉村 一 さん>
選者評
ゴム印の無造作な扱われようが、
辞めていった人たちへの気持ちのなさと
重なる。
わたしは、この情景がすごくわかりました。
ちょうどゴム印を使う事務だったので、
辞めた人のゴム印は捨てずに取っておくのです。
例えば、鈴木二郎さんが異動してきた場合、
すぐに新しいゴム印をつくらずに、
古いゴム印箱の中から、苗字が”鈴木”
名前が”二郎”をさがして、ゴムをていねいに
切り離して、さらにくっ付けて
”鈴木二郎”のゴム印を作ってしまうのです。
こんな節約的方法が昔から引き継がれて
いました。
古いゴム印箱の中には、退職した私のゴム印が
今もひっそりと保管されているのでしょうか。
それとも、切り貼りされて別の名前に
変身して使われ、少しは役に立って
いるのでしょうか。