何となく見たくなって、10年ぶりくらいのカリオストロだ。

やっぱり名作。
キャラ造形の見事さはいまさらいうまでもなく、シナリオ・構成にムダがなく、台詞に気も利いていて、全く破綻がない。画面づくりも隅々にまで気が利いている。全てのシーンが面白い。アクションも面白いし、ルパンのスーパーマンぶりにも説得力がある。構図もいいし背景も美しい。更に、山田康雄たち声優陣の演技もすばらしい。台詞が、シナリオを越えていきいきしている。
いま見ても、ほとんど古くなっていない。作品世界も、破綻していない。むしろ、城内警備用のレーザーは、いまの方がリアリティがあるかも。
「あなたの心です」の台詞のくささは、評価の別れるところかもしれないけど、40前になってみてみると、それはそれで味があっていい。銭形らしいっていえばいえるしね。

大人になって改めて気づいたこともある。
両親を伯爵に暗殺され、汚らわしい血を知りつつ、そこから脱却しようとするクラリスのけなげな強さ。
そのシリアスな設定と、そこから外れないしっかりした構成。子供の頃はただのお姫様くらいの認識だったけど、たった5年前に親族を暗殺された女の子が、暗殺者の陰謀とけなげに戦う。そうか、クラリスってすごい頑張ってたんだな。アウンサウンスーチーさんみたいな感じか。

カリオストロ伯爵の狙いや社会性も、リアリティからはずれない。
大公は多分、国民に人気のあるいい王様だったんだろう。出来れば伯爵家と手を切って、まっとうな国家になりたかったんだろうけど、すごい暗殺部隊をもつ彼らから逃れる事はできなかったんだろう。地下には、王冠をかぶった遺体もあった。つまり大公でも暗殺を辞さない関係だった。実際大火事で暗殺されちゃったし。
それでも大公を暗殺するというのは、伯爵にとっては大勝負にはちがいない。400年、裏に隠れて生きてきた暗殺集団が、表舞台にでようというのだ。
伯爵の切り札は、国際的な人脈と、国民的な人気のあるクラリスとの結婚だった。
クラリスはそんな陰謀を全てしっていて、自分しか、その陰謀を知らないという状況だった。だからことあるごとに脱走を試みてきたんだろう。
クライマックスの時計台で、ルパンに「怖いか?」と聞かれ「いいえ」と答えるところがある。銃弾の雨の中、怖くないわけは無い。しかし、いいえ、と答えるのは、ルパンへの信頼もあるだろうけど、実はもっと怖い目に何度もあってきた、という表現なのではないか。

大人になって、そんなことが分かるようになっても、ストーリーに破綻は無い。
すごい。

ざっくり思い出してみても、これほどの完成度の映画は、古今東西それほど多くない。

比べるのに、真っ先に思いうかべるのが、黒澤明の用心棒だった。
子供の頃から両方好きだったけど、大人になって、アニメ・実写という枠を越えて、公平に比べられるようになったと思う。そんな前提で、カリオストロは世界の名作といっていいと思う。
公開が1979年だって。30年経って、古びないというのは、それだけでもスゴい。
他には、2001年とか、8 1/2とか、そんなクラスといっていいのでは。


映画というのは面白いもので、どんなに売れても人気があっても、出来が良くないことはよくある。

筆頭はスターウォーズかな。
僕も大好きで、DVD全部もってるけど、映画としての出来はひどい。キャラ造形の中途半端、シナリオの破綻、構成の雑さ。でも、それを越える魅力があのシリーズにはある。

ガンダムは、スターウォーズよりは遥かにまし。
ストーリー、構成、キャラ造形は、すばらしくよく出来ているけど、シナリオがひどいところがたくさんある。Zなんか、シナリオはぼろぼろだと思う。でも、ガンダムは人生だから、いいんだけど。


かつて、宮崎駿はアニメはあくまで漫画映画だといっていた。
その1つの集大成が本作だけど、漫画映画の粋は、映画の完成度に矛盾するものではないことがよく分かる。むしろ、いまじゃ、ハリウッド映画が漫画映画みたいになってきた。
いまこそ、こんな映画が、アニメという枠を越えて、再評価されてもいいと思うんだよね。
せっかくなんで、椿三十郎と見比べてみるのもいいのでは。

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