最近仏教の話をブログに書いていたらパートナーが、読んでみる?と一休宗純に関する本をふたつ渡してくれました。

どちらも漫画で、一方は彼がファンのテレビ局、Eテレ制作の5分間アニメ番組「オトナの一休さん」を図書化したもの、もう一つは坂口尚作の「あっかんべェ一休」です。

 

坂口尚氏は重いテーマを膨大なリサーチに基づき作品にする作家で、「石の花」では第2次世界大戦時のユーゴスラビアでの、多国による支配下で起こった壮絶な人民解放戦争のドラマを描いています。

私はこの作品で、大戦中に強制収容所に入れられ、殺されたのはユダヤ人やジプシー、身体障碍者や一部のスラブ系の人たちだけではない事を知りました。

 

多民族、宗教、文化を抱えるユーゴスラビアの複雑な事情が絡み合い、支配国によるスロベニア人などへの民族浄化に並び、自国民によるセルビア人やジプシー(ロマ)への大量虐殺、対してナチス・ドイツへの抵抗勢力によるクロアチア人への民族浄化も行われました。

共通の敵がいても、団結には至らないのだという事実が悲惨です。

 

といったどしんと重いテーマを描く坂口氏の一休さんですから、やはり"苦しみぬいた男のお話し"です。同じく動乱の室町時代を生きた能楽師、世阿弥の繁栄と没落の生涯を能舞台さながらな演出で挟みながら、同時進行で語り進める映画的な展開も斬新です。

 

なんだかとんち小僧のほんわかしたイメージを持っていましたが、戦乱と貧困、そして死の病が蔓延り、生が瞬く間に消える時代の中で禅を求道し続けた生涯でした。

 

最後には「死にたくない」と言い、座して逝かれたとあります。

 

お坊さんの苗字のような、頭につく"道号"とはそれぞれの僧の目指すところ、または得たところを表して名とするもので、師匠から授かるものだそうです。

「一休」の道号は、弟子入りした2番目のお師匠の華叟宗曇(かそうそうどん)禅師から出された公案に対し、「有漏路(うろぢ)より無漏路(むろぢ)へ帰る 一休み 雨ふらば降れ 風ふかば吹け」と解いたことから授かりました。

 

先に読んでいた解かりやすい仏教入門書(こちら)で難解な仏教用語を少し勉強していたので、ここはすっと入ってきました。「漏」とは流れ出ることを意味し、「有漏」とは煩悩が垂れ流され続けていて、心がその影響下にある状態のことです。よって煩悩の汚れのない状態は「無漏」と。

 

坂口尚氏の一休さんはその道号名のごとく、自ら弟子入りした最初のお師匠、座禅を禁じた謙翁宗為(けんおう そうい)禅師が言ったように「悟って迷い、また悟って迷うの繰り返し」を生きたように描かれています。

 

室町時代に腐敗が蔓延る寺から出て一休さんに師事した南江宗沅(なんこう そうげん)に話した言葉が、なかなか素晴らしい戒めで印象的でした。

 

 私もあんたもボロだが法衣を着けている、用心せねば。

 法衣は"欲"を断ち切りたいという欲のあらわれだ。

 私はいつもそのことを忘れまいと思っている。

 

 

 

 

そして「オトナの一休さん」の一休さんは、エンターテイメント的に描かれているせいもあり(どちらもエンターテイメントであるとも言えますが)、ぶっちぎりの破戒僧がたくさんの人に愛されるキャラクターとして登場しています。

 

殆ど全てのエピソードに絡んで登場する兄弟子の養叟宗頤(ようそう そうい)は「あっかんべェ一休」でも確執を持つ相手としてずっと登場しますが、あちらは養叟が一貫して強い対抗意識と憎しみをぶつけてくる感じ。彼自身も禅修道においてたくさん苦しんだ僧としても描かれています。

 

一方「オトナの一休さん」の養叟和尚はコミカルでしたたかです。

 

堺の商人や一般人に、悟りを開いたとお墨付きを与える印可状を売ったり、軽く楽しく禅体験できるお寺を女性信者や芸能者、商人たちに開放したりと、禅を広めようとあれこれ営業をする養叟和尚を、禅を世渡りの道具としていると痛烈に批判した一休さんは、かなりの悪口を書いているようです。

 

大徳寺という臨済宗の本山存続のため、禅ビジネスともいえる経営者としての活動もした養叟和尚に対し、何も背負うものがなく風来坊で、心のままに徹底して自由に生きようとした一休さんは随分楽だともいえます。

もっとも"禅とは楽に生きるための道"、と私が好きな現代に生きる禅師、玄侑宗久師も言っていますが。

 

可愛がっていた雀が死んでしまい、ひどく悲しみ雀に戒名をつけてお弔いをしたエピソードでは、死ぬまで生を生き抜いた一休さんの姿勢が感じられます。今目の前に起こっていることを全身全霊で受けとめる。それは自分の悲しいという心の状態でもあり、無常の中で繰り返す生死への慈しみでもありましょう。

 

京の町が大飢饉に襲われ、庶民の悲惨な状況を目にして禅宗寺が何も行動しなかった時、救済に励む他の宗派に改宗した一休さんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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