とても解りやすい仏教の入門解説書です。

 

仏教を「わかる」ための本。「わかる」というのは、知識の量を増やすことではなくて、そうした知識を相互に関連づけながら、統一的に理解することができるような道筋を、自分の中に設定できること。本書はそのような道筋を、仏教を「わかりたい」読者に対して、提供することを目的とする。(*はじめにより抜粋)

 

各章で何を語っているのか明確に提示され、論点が整理されているのでとても分かりやすいです。著者は仏教研究者の魚川裕司氏。学者さんの書く論文や本は非常に読みづらいと感じることが多いですが、ちゃんと理解できるように書かれています。

 

全体の構成は教科書的(それが解かりやすい、という要因でもある)、ですが魚川氏の知的なユーモアもそこはしこに挿入されていて楽しいです。おそらく著者が別のテーマを語るとしても、同じく理解しやすい論説を展開されるのだろうと思います。

 

「仏教思想のゼロポイント」は仏教とは何かを、修道者である仏教徒たちがまさに修行しているその"目的"と、それを達成した"結果"とはどういったものなのかに比重を置いて解説しています。開祖であるゴータマ・ブッダが導く教えとは、何なのか。

 

その目的は解脱、結果は涅槃です。 

 

ここ数年、仏陀の教えを引用して"癒し"や"安らぎ"を導こうとする本をたくさん目にしますし、私自身も、アルボムッレ・スマナサーラ氏の「心がスーッとなるブッダの言葉」、他にも禅語、仏道のことばなどの本を持っています。

それぞれ素敵な本で好きなのですが、こういった仏教がある意味処世術的に使われるジャンルの書物は、私の仏教への理解を困難にしている面もありました。

 

出家修行者が労働と生殖の禁止を要請されるのとは違い、仏教の在家者への教えは善行を積んで来世でよりよい生を得ることを説くもので、本来の仏陀の哲学とは少し違うもの、もしくは全く別のものとも言えるのかもしれません。

在家信者向けの代表的な説法の中では、人との付き合い方から財産の運営法まで解説されているようです。

 

在家信者も仏弟子であることに変わりはありませんが、仏教が2600年前から今に至るまで修道され続けていることからも、その処世術的な側面はゴータマ・ブッダの仏教の本質的な特徴であるとは言い難いとの点は納得できます。


 

 

 

仏教の世界観を成す「縁起の説」から形成される「苦」、パーリ語、サンスクリット語ではDUKKHA(ドゥッカ)の英語訳は現代ではUNSATISFACTORINESSとされるというのは、目から鱗でした。

日本語にすると「苦」というよりは「不満足」になりますが、これはドゥッカの意味合いをよく伝えているのだと。

 

仏教の考える「苦」とは、 単に苦痛のみを意味しているわけではなく、欲望の対象が無常である以上、欲望の充足を求める営みは常に不満足におわるしかないという事態こそを示している。

このような「終わりのない不満足」が、たかだか百年程度の「一生の問題」ならそれでもまだましかもしれないけれど、仏教の基盤になっているのは輪廻転生の世界観であり、私たちは旦度も繰り返し生まれつづけ、繰り返し死に続ける無数の生涯を反復する。

 

生死を繰り返す輪廻の中にあるのは苦しみだ、というのは、仏教が起こった時代にインドに広く浸透していた考え方でもあるようです。

 

解かりやすい本ではありますが、やはり難解な漢訳仏教用語が出てきます。先の苦(ドゥッカ)の英訳もそうですが、気づき→Mindfulnessなど、英語にするともっとイメージがクリアになる仏教用語がたくさんあります。

 

とても良い教材を見つけました。PBS制作のドキュメンタリー番組。

 

 

 

 

PBSはアメリカの公共放送サービスで、子供向けの良質なアート、教育関連のプログラムを提供し続けています。大人向けにもインテリジェンスでユニークな番組が多く、映画監督マーティン・スコセッシがプロデュースした、7人のフィルムメーカー達によるブルースの歴史を辿ったドキュメンタリー・シリーズ「The Blues」は秀作です。

 

この「The Buddha」もPBS制作で、詩人、精神医学者、作家、仏教研究者、宗教学者、天体物理学者、ダライ・ラマ氏を含む仏僧たちなど、様々な人々が仏陀の生涯とその物語性、その教えにある根本的なものを語る、美しいアニメーションが印象的なリッチなドキュメンタリーです。
 

この中ではUNSATISFACTORINESSについても語られ、難解な漢訳仏教用語もシンプルなので解かりやすいのです。例えば四諦(したい)、仏説の根本であり、繰り返しの不満足な生存状態から抜け出す方法である四つの項目は、英語ではFour Noble Truthsです。

 

しかしながら、英訳にすると解りづらい仏教用語もあるということに最近気づきました。それは「空」です。次回はそれについて書きます。

 

 

 

 

 

 

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