前回からの続きです。

 

 前回は、癌菌と拮抗する微生物をどこで手に入れるか? ということを述べました。今回は、バラ栽培では絶対に必要な土、園芸用土、また、それらに関する事柄について述べてみたいと思います。(重複する内容もありますが、ご了承ください。)

 

 

バラ用の培養土とは

 

 まず、培養土とは…、いろいろな種類の土を混ぜ合わせて、植物が健全に成長するための土です。肥料成分が多く入っている土もあれば、肥料成分の代わりに微生物資材が混入されている土など、その目的に応じた多くの種類が販売されています。培養土の逆という意味ではないですが、何も混ぜていない一種類の土だけで用いることを単用土などと呼んだりもします。いずれにしても、培養土と呼ばれる土は、基本的に鉢植えにする場合やプランター栽培に使用する土です。もしくは、地植えにする前段階の苗を成長させるための期間に植えておく用土です。

 

 前回の終わり近くに書き記した、DAのローズスタートのように、根に直接振りかけるような微生物資材の場合は、地植え、鉢植え、どちらでも使用できます。

 樹木を地植えで植え付ける場合、造園業者の方々は、根より一回り大きな穴を掘り、わりと深めに掘った底に堆肥を入れ、根が直接堆肥に触れないように土を被せてから植え付けます。そして、穴の底に入れた堆肥以外は、元々その場にあった…すなわち、穴を掘った土で植え付けます。ですから、ローズスタートのように根に菌根を纏わり付かせて植えるという行為は、病原菌などを寄せ付けないという意味で有効になるのです。

 一方、鉢植えはどうでしょう…。まず根域が限られること、そして、基本的に鉢の外から病原菌が侵入して来ないこと…、などが起こりますので、培養土自体に菌根や有用微生物が含まれていれば、そのまま植え付け、根が伸びるのと同時に菌根や有用微生物は根に纏わり付いて行く、ということになります。また、このような培養土で育てた苗には、すでに菌根が付着しており、そのままどこにでも植え付けられる、という理論が成立します。

 近頃のナーセリーさんの植え付けの説明では、根鉢(ネバチ、従来はポット内が根でパンパンになった状態をこのように呼びましたが、昨今は苗が植えてある鉢やポットの土を崩さずという意味に変わっています)のまま植え付けるとの説明書きが多くなっています。

 なぜこのように植え付けるかというと、前回までに述べたように、根頭癌腫病を予防するため、根に傷が付くと癌菌に寄生される可能性が高くなるので、根が切れるような行為は止めましょう、ということです。ただ、植え付ける土の中に癌菌がいなければ、根が傷んでも特に問題になる様なことではありませんが…。

 

 話が培養土と離れてしまいましたが、元に戻し…、まず、園芸用土の主な種類について説明して行きます。

 

園芸用土の種類

 

赤玉土(アカダマツチ)

 園芸用土のもっとも基本的な土です。関東ローム層と呼ばれる、富士山や箱根山などが噴火していた50万年前からの火山灰が降り積もり、長い年月を経て火山灰の中に含まれていた鉄分が酸化(アカサビ)した赤い色をしています。元々が火山灰なので有機物をほとんど含まず、中性から弱酸性で肥料分はほぼありません。赤土を単純に乾燥させた物や焼成した硬い物があり、価格帯も千差万別です。水はけを良くするために使うため、硬めの物がお勧めです。ただし、崩れてしまった赤玉土は、水はけが悪くなるので注意が必要です。関東地区以外でも赤土は取れますが、火山灰ではない物が多く、若干成分が変わります。ちなみに、私の畑がある高知県でも赤い土が取れますが、これは墓石などの石材で使われる花崗岩が、もっと長い年月を経て赤く風化した土で、まるで別物です。

 

鹿沼土(カヌマツチ) 

 栃木県鹿沼市が主な産地で、群馬県の赤城山が4.5~3万年前に噴火していた時代の噴出物で、土と呼びますが軽石が風化した物です。わりと強い酸性で、酸性を嫌う植物には使えません。なぜ酸性かというと、日本の雨は酸性雨が多く、それが蓄積された結果です。また、鉢植えなどでも肥料を与えると土が酸性に傾き、それが酸性傾向を生み出します。昭和40年代のサツキブームで有名になった土です。鹿沼土に似た土で「日向土」というのがあります。こちらは鹿沼土よりも風化が進んでおらず、硬くて酸性も高くありません。赤玉土と同様、硬さや大きさに違いがあり、安価な物から高価な物まで千差万別です。肥料分は無く、ほぼ無菌状態なので、挿し木などに用いられます。

 

黒土(クロツチ)

 関東ローム層の赤土の上に生えた植物などの腐植(植物の残渣が微生物で分解された物)を含み、黒くてホクホクした土という意味で、黒ぼく土とも呼ばれます。山の中の腐葉土が年月をかけてもっと分解されたような土です。黒土だけで用いると水はけが悪いため、園芸用土としては赤玉土や鹿沼土と混ぜ合わせ、水はけを良くして使用します。また、黒い色が熱を吸収し地温が上がりやすいので、畑の土としては特に好まれています。腐葉土などを多くすき込んだ畑の土が黒く見えるのは、この黒土に近付いている証です。

 

腐葉土(フヨウド)

 一般的に腐葉土と呼ばれる土は、山に生えている広葉樹の落葉した落ち葉が、その地域の土着の放線菌などによって、ある程度分解された状態です。ハラタケ科のモエギダケ属などの放線菌が付いていることが多く、腐葉土を混入した鉢植えで細長い柄の小さなキノコが生えてくることが多いですが、それらはシビレタケやワライタケの仲間なので、食べてはいけません。また、以前より腐葉土の人気が落ちたのにはその原因もあり、私は現在、腐葉土の業者さんとは何の関わりもないので率直な事情をここに書き込むことにします。腐葉土を二つに分ると、まず国産品と輸入品に分けられます。日本の国土の80%は山地だと言われますが、植林が行われた結果、腐葉土が採取できる場所が少ないなどの理由から、国産品は値段も高くて入手も困難です。それに比べ、中国産などの輸入品は安価で、ホームセンターなどで販売している腐葉土はすべて輸入品と言って過言ではありません。そして、なぜ、輸入品はいけないの? と思われるかも知れませんが、腐葉土は堆肥のように完熟状態ではなく、いろんな病原菌や昆虫の卵を含むのが普通で、輸入原料は約1年がかりで、輸入した腐葉土を抗生物質や殺虫剤まみれにして、それらが死滅した後、薬効成分が抜けた頃に袋に詰めて出荷します。私はこれを知って、ホームセンターの腐葉土を使うことを止めました。(国産なら問題ありませんが…高価で…) このような事情から、現代の園芸に必要なものではないと判断し腐葉土については割愛します。

 

堆肥(タイヒ)類

 堆肥と言っても、牛ふん堆肥、バーク堆肥など、数種類の堆肥があります。いろんな有機物を微生物が分解、発酵を繰り返して、植物が生育できる状態になった土(堆肥)です。ちなみに、植物が根を張れない状態の家畜ふんや植物残渣などは、生堆肥とか、未発酵の(未熟)堆肥などと呼ばれ、実際に植物が根を張ることができません。(生ごみの中で発芽して成長するのはカボチャくらいです。)堆肥と呼ばれる物を列記しますと、家畜ふん堆肥としては、牛ふん堆肥、豚ふん堆肥、鶏ふん堆肥などがあり、植物系堆肥としては、麦わら堆肥、もみがら堆肥、木質堆肥、バーク堆肥があり、人間が食べなかった食料を堆肥化した、生ごみ堆肥などもあります。これらの堆肥は、どれも数種類を混合して流通していますので、単体でこの堆肥ということはほぼありません。大雑把に言って、家畜ふん堆肥には肥料成分があり、植物系には肥料成分が無い、と認識していただき、自分が行う肥培管理で、どちらが適しているかで選んでください。ちなみに私は、肥料成分がほとんど入っていないバーク堆肥をメインに使っています。その理由は、堆肥の肥料分は消費されやすく、油断していると肥切れを起こしてしまうからです。なお、「堆肥」と銘打って販売するためには特殊肥料として国や県(地方農政局や都道府県知事)に登録申請を行わなければなりません。なので、登録番号が明記されている物を選びましょう。また、堆肥ベースでも、肥料成分を含まない赤玉土や鹿沼土などを混ぜた「培養土」などは登録申請を行っていないので、自己判断で良い物を選びましょう。

 

バーミキュライト

 黒雲母や金雲母などが風化した「蛭石(正確には苦土蛭石)」という原鉱石を800℃以上で加熱(焼成)風化処理し、10倍以上に膨張させたものです。多孔質で非常に軽く、保水性・通気性・保肥性があり、ほぼ中性です。肥料の流亡を防ぐ目的で、パーライトと同様に培養土などに混入されます。また、高温で焼成しているためにほぼ無菌なので、挿し木用土、種蒔き用土としても使われます。なお、微生物資材施用後は、その細かい隙間が微生物の住処になります。

 

パーライト

 真珠岩などのガラス質の火山岩を、高温処理して作る非常に軽い粒状の人工砂礫です。 バーミキュライトと同様に通気性、排水性に富むので、粘質土などの改良に適しています。ただ、とても軽いので水に浮いて、流されてしまうこともあります。弱アルカリ性で肥料成分が含まれていません。また、黒曜石から作られたパーライトは、発泡した独立気泡の集合体になり、粒の芯に浸水しないため軽量性を保ち主に建設材料などにも用いられます。バーミキュライトと同様に、微生物資材施用後は、その細かい隙間が微生物の住処になり、加えて、肥料成分の流亡を防ぎます。

 

ピートモス

 ミズゴケやヨシ、スゲなどの植物が腐植物質となって低温下で蓄積した泥炭(でいたん)を乾燥させたものです。腐葉土によく似た性質を持ち、無菌で、通気性、保水性、保肥性が高く、有機酸を含みます。やや強い酸性で、ブルーベリーなどの栽培に用いられ、石灰を加えて中和し、中性にしたものもあります。一度乾燥した物は、水を弾きやすいので注意が必要です。主な産地はカナダやヨーロッパ、樺太、北海道など。産地により、元となる植物の種類や構成比が異なることから、その物理的性質も多少異なります。また、前述の産地順に、分解される年月が違い、カナダやヨーロッパ産が短く、北海道産は長くなります。(ただ、北海道産は入手困難です。)

 

ココピート

 ヤシ科の単子葉植物、ココヤシの果実でココナッツ(単純に椰子の実とも呼びます)の殻から作られた天然繊維です。殻からココナッツ繊維(ココナッツミルク)を抽出すると、ココピートと呼ばれるこの副産物が得られます。弱酸性で表面にたくさんの細かい穴が空いた多孔質構造で、作物の生育に必要な水分を保持してくれます。地球環境保護への関心が高まる昨今、使用後に産業廃棄物になるロックウールや土地を掘り起こして採取しているピートモスに代わる環境配慮型の土壌改良材として、欧米を中心に普及が進んでいます。また、同じくヤシ殻から作られるベラボン(ココチップ、ハスクチップとも呼ばれる)も同様の特性を持っていますが、こちらはココピートより大きめのチップに加工されており、主に観葉植物などに使用されています。なお、本題から外れますが、アブラヤシの実から採取する「パーム油の問題」が、近年注目されているので、環境問題に関心のある方は、検索してみてください。

 

 以上が主な園芸用土の説明です。が、最後のココピートについての補足です…。最近の安価な新苗がこれに植えてあるのが多くなっており、「なぜ土ではなく、ココナッツの繊維に…」との疑問から、いろいろ調べてみました。

 このココピートには癌菌と拮抗する天然のトリコデルマ菌が付着していると宣伝されており(確実に付着しているかは不明ですが…)、癌菌の他にも病原菌であるリゾクトニア菌(立枯病)やピシウム菌(根茎腐敗病)などを寄せ付けない効果が期待されています。そして、バラ苗生産者の誰かが、掘り起こされて根が切られた新苗(または裸苗)の植え付けに「ベストマッチだ!」と考え、それから始まったものだと思われます。

 

SDGsとか…カーボンニュートラルとか…

 

 この考え方は間違いではないし、私も素晴らしいと感じています。ただ、私が好感を持つ理由は、SDGsやサスティナブルとかを昨今よく耳にしますが、今まで廃棄(焼却処分)していたヤシの殻を有効利用している点の方に好感が持てて…、例えば、コンビニの弁当の箸が竹製に変わったのと同じくらいの好感を持っています。

 なぜなら、これだけSDGsとかが社会現象になっているにも関わらず、私の住む市では溶融炉といって、何でも燃やす(高温で溶かしてしまう)ゴミ焼却場があり、SDGsを教える立場の教師や、環境問題を推進する側の市役所職員の方、すべての方々がそうだとは言いませんが、私の近所のそれらの業種の方々は、ゴミの分別やリサイクルを一切行おうとはせず、何でもかんでもゴミ袋に入れて捨てています。

 また加えて言うならば、二酸化炭素排出抑制とか、カーボンニュートラルとかが社会現象にもなっているのに、私の畑の周りには、ビニールハウスで重油を燃やして暖房しながら作物を作っている人が大勢いて、そこには想像を絶するような多くの税金が投入されています…。民間企業が努力しても、国はお構いなしに補助金を配る…、とても矛盾した世の中です。冬に夏野菜を食べようとするから、こんな矛盾した農業が起こるのです。冬は大根や白菜、ブロッコリーなどの旬の野菜を食べた方が栄養価も高く、私は健康的だと思いますが…。孫子の代まで、豊かな自然環境を残すには、今のアクションが重要です。

 

 以上、また話が逸れましたが…、今回は園芸用土について書き込みました。

 

 次回は、私が作っている「根頭癌腫病と戦う微生物入り培養土、ベストミックス」の詳細と、それらに関する事柄について述べてみたいと思います。

 

 

 なおこのブログは、私が作っているバラ用の「根頭癌腫病と戦う微生物入り培養土 【商品名】  ベストミックス(BEST MIX)」をお知らせするためのブログです。

最後の清流と呼ばれる四万十川の流れる、高知県の田舎から、全国のバラや桜の未来を案じて…、この培養土を作りました。ご連絡を頂ければ、直接発送も致します。グーグルマップにて「高知県四万十市(しまんとし)秋田(あいだ)」で検索してみて下さい。

 

 

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※ 一般的な微生物混入培養土より、微生物をたっぷり入れています。庭土や安価な培養土に混ぜても有効です。

 

(注)このブログは、私が製造販売しているバラ用培養土「ベストミックス」のお知らせブログなので、学術論文ではありませんが、大学や研究機関の論文などを参考にしています。