前回からの続きです。

 

 前回は、癌菌と拮抗する微生物を列記しました。今回は、これらをどこで手に入れるか? ということを述べたいと思います。(重複する内容もありますが、ご了承ください。)

 

拮抗する微生物たち…

 

 前回の列記した順番で行きたいと思います。

 

Penicillum(ペニシリウム) 抗生物質のペニシリンを作り出すことで有名なアオカビです。入手方法はパンやミカンに生えたアオカビです。そもそも、堆肥などを含んだ、園芸用培養土にはどれにでも存在していますが、必要であれば、アオカビの生えたミカンの皮などを細かく刻んですき込むことで一層増やすことができます。ただし、他の微生物がペニシリンで死滅することもあるので、適度なバランスが必要です。

 

Asperigillus(アスペルギルス) 麹菌として市販されている種菌を購入します(1000円以内で購入可能です)。自分で作るにしても種菌は必要ですし、無菌室などで増殖させないと他の菌が繁殖する可能性が高いです。また、近い種類で「酵母菌(イースト菌)」がありますが、現時点で酵母菌が癌菌に拮抗するとの報告はありません。ちなみに、排水口などの水まわりに生える「ピンクカビ」としてCMなどで有名になった「ロドトルラ」も酵母菌の一種です。酵母菌は光合成細菌と組み合わせて、水質浄化などによく使われます。なお、麹菌や酵母菌は納豆菌に弱いため、培養土の中に混ぜ込んでも負けてしまいます。酒蔵やパン屋さんが納豆を食べないのは、こんな理由からです。

 

Pseudomonas(シュードモナス) 緑膿菌で有名です。健康な人の口腔内にも存在していますので、朝の歯磨き前の舌クリーナーなどでこそぎ落とした中にも含まれます。多くの土壌で普通に存在している菌なので、特に入手して混入する必要はないでしょう。

 

Trichoderma(トリコデルマ) 農業用微生物資材として販売されています。私が作っている培養土「ベストミックス」にも混入しています。また、先に述べるべきでしたが、ここでキノコ類について簡単に説明をしておきます。キノコ類には大きく分けて2種類あり、他の植物の根に寄生や共生を行うもの(マツタケやトリュフ、ポルチーニなど)と、倒木や有機物を分解する(鉢植えから生える黄色いキノコのコガネキヌカラカサタケやシイタケ、マッシュルームなど)がいます。また、キノコとカビの違いも述べておきますが、分類上はどちらも糸状菌という同じ仲間で、目で見てわかる大きさの繁殖器官を作るものをキノコと呼びます。

(東南アジアから渡って来た熱帯性のコガネキヌカラカサタケです)

 

Bacillus(バチルス) 納豆菌で有名です。安価な方法は食用の納豆を直接すき込むことです。近い種類で「ラクトバチルス(乳酸菌)」がありますが、現時点でこれが拮抗するとの報告はありません。しかし、これをすき込むことによって、微生物のバランスが良くなる報告もあります。Bacillus subtilis natto(バチルス・サブチリス・ナットー)の純粋な納豆菌は、私が作っている培養土「ベストミックス」にも混入しています。加えて、次回以降に後述すると思いますが、癌腫がまだ軟らかい状態の時に、癌腫に納豆そのものを擦り付けておくと、癌腫が縮んで行く状態を何度か確認しているので、これをメインに加えた培養土を考えました。

 

Enterobacter(エンテロバクター) 腸内細菌の日和見菌です。手っ取り早い入手方法は大便から取ることなので、犬の糞からでも可能です。ただし、病原性の大腸菌などを増やさないために、乳酸菌やビフィズス菌なども一緒にすき込む方が良いでしょう。ちなみに、猫の腸内は人間や犬などの雑食および草食系の牛や馬などの腸内細菌とは別物で、猫の糞にエンテロバクターはほぼいないようです。牛糞堆肥などには基本的に混入していますので、これを少量すき込むことでも可能です。私の生活している四万十市の農業公社では、人糞ともみ殻を原料にした堆肥を作っているので、今後、混入するかどうか検討中です。

 

Stenotrophomonas maltophilia(ステノトロフォモナス・マルトフィリア) 土壌や汚水に生息する多剤耐性の細菌です。必要であれば、病院や検査機関で肺炎および菌血症の細菌を譲ってもらいますが、ほぼ無理だと思います。それよりも、自身が感染するリスクもあるので、入手は諦めましょう。

 

Flavobacterium(フラボバクテリウム) 多様な土壌と淡水環境に生息する細菌で、この中の数種は淡水魚に感染する病原菌です。入手方法は、自宅で淡水魚を飼っている水槽があったり、庭に池などがあれば、これらの菌が存在する可能性が高いので、そこの水を汲んで与えるだけです。金魚などの尾腐れ病もこの菌で発症しますので、こんな水槽の水には確実に含まれます。また、こんな病気で死んでしまったメダカや金魚を株元に埋めてしまう方法もあります。この属は種類が多くても、ほぼすべてが拮抗すると報告されていますが、例えば、庭の池の横に植えたバラには癌腫ができない、とか、池の水を与えているから癌腫ができない、などという実体験があればなおさらです。

 

Agrobacterium radiobacter K84(アグロバクテリウム・ラジオバクター・K84) 前回説明したように、すでに販売中止なので入手できません。必要であれば、以前購入して在庫のある人から譲ってもらう。(有効期限が3ケ月なので、活性は下がっているかも…)もしくは、これを使ったと明らかな株(鉢植えの場合)に限り、根域の土を掘り出して分けることも可能です。なお、この菌は外菌根と言って、植物の根に付着している状態で、拮抗する細菌が少なければ減ってない筈です。余談ですが、このK84を使っても、これと拮抗する細菌(今まで列記した菌)がそれなりに入っている土で育てているとK84は確実に減ってしまい逆効果だと言えます。

 

Acanthamoeba(アカントアメーバ) バクテリア(細菌)を捕食する原生生物です。いろんな病原菌を捕食してくれますが、良い菌も食べてしまいます。なので、もし入れるとしたら、密度の問題になるでしょう。どちらかというと、水分が多い状態の方が生息しやすいので、植物が水分を吸ってしまう根域では、アメーバは生息しづらいだろうと想像できます。乾燥した状態など、生息場所の環境が悪くなると、殻をかぶって嚢子(ノウシ、シストともいう)になり、捕食を行いません。ため池などから水を汲んでくれば入手可能です。

 

Rhizobium vitis ARK-1(リゾビウム・ヴィティス ARK-1) まだ、生物農薬として製品化されていないので、発売されるまで待ちましょう。

 

 

 以上が、前回で説明した拮抗する細菌の入手方法についてです。が、重要な補足をしておきます。

 まず、ここまで列記してきた拮抗する微生物は、前回で述べたようにそれぞれ単体での寒天平板法というシャーレの中での拮抗実験の結果によるものです。しかし、微生物(細菌類)の実際の生活は、仲の良いもの同士で、いわゆる「バイオフィルム」といった、異種混合体の形で生活をしています。

 これは、「私たちはここまで分解するから、次はあなたたちへ…」と化学変化や有機物の分解を次から次へと仲間で請け負って行く、東大阪の職人の街…、みたいな状態で生活をしているのです。

 ですから、単体では拮抗しても、集団では戦わない…なんてことも起こりますし、もともと土の中にいる日和見菌の中には、癌菌に強力な助っ人になることも、また、寝返って癌菌に加担するものも考えられます。

 話の方向性がズレそうですが…、何が言いたいか簡単に説明すると、癌菌はバラ科の植物が存在しないと増殖できません。従って、癌菌が活性していない状態のうちに、先行して防御態勢を作ってしまいましょう…、と言うことです。具体的に言うと、癌菌と拮抗する微生物をなるべく多く、例えば、バラ以外の草花の鉢植えや庭に入れる土にも、これらの拮抗する微生物が混入された培養土を積極的に使って行って、癌菌の活動範囲を狭めて行きましょう…、と提案いたします。

 

 なお、追加でDAのローズスタートについても述べておきます。これは特に根頭癌腫病に何らかのアプローチをするとは謳っていないので、参考までに…。

 すでにご使用の方もいるとは思いますが、このDAのローズスタートは、一株当たり30gを濡れた根にふりかけて乾かぬうちに植え付けます。

原材料は、土壌有用菌6種、内生菌根菌9種、外生菌根菌9種、アミノ酸、ビタミンC、ビタミンB1、海草かす、大豆油かす、野菜残さ、ということで、すごい数の細菌が混入されています。また、(株)プロトリーフ(東京都港区三田)と共同開発しており、この会社は農林と鉱業の会社ですが、造園の施工なども行っています。あちらこちらの培養土のプロデュースもしているようです。

 昨今、いろんな論文を見ていると、都市の緑化などが増えており、根域が限られるビルの屋上の植栽などで樹木を育てるには「根菌が重要」との時代背景から、菌根菌などの研究が盛んに進みました。それらのデータを基に、どんどん農業用の微生物資材も増えており、ローズスタートもこの恩恵を受けていると思いますが、24種類の細菌数とは、さすがに多過ぎるような気がします。土の中で戦争が起きないか心配です…!

 それなりに専門の方々が研究した結果が24種類の細菌がベストと考えた結果でしょうが…、失礼な言い方になりますが「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」的なイメージしか私は思い浮かびません。しかし、使わないよりはましだと思いますし、150g(5株分)で送料込みでも1000円以下と安価なので、みなさんもご利用いかがでしょうか…。

 

 でも、何の菌が入っているのか…、公表していないのは気になりますよね。

 

 以前流行ったEM菌は、乳酸菌やその辺にいるような雑菌と言われるような細菌しか入っていないようでした。特に有効だと謳っていた「光合成細菌」は入っていなかったようですし…、水質浄化にも役に立たず、飲食などに用いるのは注意が必要な結果だったと、とある化学ジャーナリストさんが自費で成分分析した結果の公表を見たことがあります。

 この他には、身近なところでAI菌(愛媛県で流行りだした)というのが販売、または、自作する人もいますが、これは基本的に乳酸菌と酵母菌などからできています。市販のヨーグルトとイースト菌、納豆を、薄めた糖蜜や砂糖水などで培養すれば、すぐに作り出すことができます。

 これらは、菌根類ではなく土壌微生物ですが、土を軟らかくする、とか、土着微生物の活性や餌となる、などと謳っており、人畜無害で何の問題もありませんが、堆肥をすき込む手間を省こうとしているような物です。土質にもよりますが、実際に堆肥をすき込んだ方が、かなり有効です。

 ちなみに私も、農業用微生物資材を購入して用土に混入する以前は、自分でヨーグルト水や納豆水を作り、生育中や出荷間近の苗に定期的に撒いていました。でも、ある時気付いたことがあります…。

 私の畑では、咲き終わった花や剪定した細い枝を300ℓのコンポスト4個にて堆肥化し、できた堆肥は、家庭菜園のエリアにすき込んで、おいしい野菜を育てて食しています。(食べきれない分は、産直市場に出したりもします)そのコンポストに定期的に食用の納豆1パックを水で溶いたものを撒いて、分解発酵を促していましたが、農業用微生物資材として販売されている納豆菌を振り撒いてみたら、なんと…、コンポストの中の残渣が分解され、沈んでゆくスピードが速いことに驚きました。生の納豆でも同じだろうと考えていましたが、大きな違いだったのです。

 

 いずれにしても、土の中の微生物は、雨などで流されて減って行くのは事実ですし、菌根菌などの植物と共生する微生物以外は、その微生物が好むエサが少なくなれば、当然数を減らします。また、雨水が流れる上流側に根頭癌腫病の発生している株があると、下流の方のバラにも感染して行く、と言われています。これは以前、どこぞのバラ園の方が書き込んだブログを拝見したことがあり、私も同様だと感じています。特に微生物にとって、気温が上がって、適正水分量になる、梅雨の時期は注意が必要です。

 また話は変わりますが、細菌類は湿度を「%(一般的なパーセント)」ではなく「aw(水分活性)」という数値で表すことがあります。これは細菌類が増えて食中毒を起こさせないための、管理栄養士さんや調理師さんたちが使う数値ですが、簡単に説明したいと思います。

 ちなみに、0.81~0.84awがペニシリウム属、0.86awが黄色ブドウ球菌、0.90awが枯草菌、0.97aw緑膿菌がそれぞれ繁殖(活性)する水分量です。

 例えば、食パンにアオカビが生える水分量は? アオカビのペニシリウム属は0.81~0.84awで増殖します。これを水分が81~84%と言うと、食パンが相当ビチョビチョな状態のように感じますが、食用に適したしっとりした食パンは、これくらいの水分量を含んでいる、という具合に、%よりも何となくイメージできると思います。また、この水分量以下ではペニシリウム属の細菌は増殖できないので、食パンは乾いているように見えても、確実にこの水分量以上が含まれているということになるのです。

 鉢植えなどで水やり直後は1.0awですが、そこからどれくらいのスピードで低下して行くのか…、土質や培養土の種類によっても違います。そして、そこで微生物が繁殖できるかどうか…、想像してみて下さい。

 こうやって書くと、枯草菌(納豆菌)も0.90awで活性(増殖)しますので、何となく水分過多の状態でなくては増殖しないことが理解できます。ただ、根腐れを気にするあまり、乾燥気味で育てていると、有用微生物も減ってしまう…かも、という話です。落葉した後の真冬は、微生物も冬眠しますので、乾燥気味の方が良いですが…。

 余談ですが、植物が土の中から吸い上げる水分量は、一般的に洗濯物が良く乾く状態の時で、幹や茎葉を含めた植物の地上の体積とほぼ同じ水分量を一日で吸い上げると言われます。草花などはそれ以上とも…。水やりの参考までに…。

 

 

以上、今回は細菌や微生物の入手先などを書き込みました。

 

 

次回は、バラ用の培養土に必要な様々な園芸用土について述べてみたいと思います。

 

 

 なおこのブログは、私が作っているバラ用の「根頭癌腫病と戦う微生物入り培養土 【商品名】  ベストミックス(BEST MIX)」をお知らせするためのブログです。

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※ 一般的な微生物混入培養土より、微生物をたっぷり入れています。庭土や安価な培養土に混ぜても有効です。

 

(注)このブログは、私が製造販売しているバラ用培養土「ベストミックス」のお知らせブログなので、学術論文ではありませんが、大学や研究機関の論文などを参考にしています。