このブログは、私が作っているバラ用の「根頭癌腫病と戦う微生物入り培養土【商品名】ベストミックス(BEST MIX)」をお知らせするためのブログです。

 

まずは、自己紹介とご挨拶

 

 私は東京で生まれ育ちましたが、徒歩による日本一周を行った数年後、筋ジストロフィーの少年の車いすを押しながら四国遍路をしている時に、お接待をしてくれた女性と縁あって、現在は高知県四万十市にて生活をしています。移住したのは、四万十市がまだ中村市だった20年以上前のことです。  

(四国の新聞各社(上の白黒写真は高知新聞)と日テレ系のズームイン朝や24時間テレビで報道されていたので、ご存じの方も多いかと…)

 

 移住してから、仕事の無い高知県で生活して行くために、市役所が運営している米ナスの水耕(養液)栽培の園芸ハウスにて、研修生として農業全般と肥培管理を習うとともに、自ら肥料や微生物の自習と遠征視察などを行って研鑽を重ねました。子供の頃から好奇心旺盛だったので…。

 その後、農地を所有していない私は、農業では生活ができない…、と感じて農業から離れ、設備管理や建設関係の仕事を行い、その間に、危険物、ボイラー、電気工事、冷凍機械、小型船舶などの国家資格を次々に所得しました。歳を重ねても、好奇心旺盛だったので…。

 そんな仕事を行っている期間でも、農協の正組合員で農協が運営する産直市場の出品権利を持っていたために、副業として、15年ほど前からバラの苗の販売、苗と言うか…

 

 もっと過去の話をしますが…、私は東京で育った中学生時代に、母親が花屋を営んでいました。その花屋で店番をさせられることが多く、私が店番をしている時に、近所の反社のオジサンが彼女に捧げるバラの花束を良く買いに来てくれていました。赤いバラにカスミソウを混ぜて、フェニックスで外側を固定した鉄板花束です。昭和のいい時代でした…

 そんな経験があり、バラの栽培を行うようになると「バラと言ったら、花束でしょう!」 という気持ちから、ナーセリーさんから購入したいわゆる新苗を、立派な9号鉢の完成品(生きた花束)として販売を始めたのです。

   (新苗を一年間育てて、販売していました。レオナルドダヴィンチです)

 

 そんなある日、数あるバラ苗の根元にボコボコした膨らみを発見しました。これが根頭癌腫病との初対面でした。それから名前だけは知っていた「バラの癌」について、いろいろ調べるようになったのです。またしても、好奇心旺盛だったので…。

 私が花屋でバラの花束を作っていた頃の、1980年代から根頭癌腫病がいろんな論文に登場することになります。バクテローズのK84もこの頃です。

 

 このように、私自身は、先輩方のように半世紀も前からバラの栽培に関わっていた訳ではなく、まだまだ駆け出しです。しかし、それゆえに、迷信や思い込みといった経験値を排除した、今だから判明している事柄や論文などに基づいた根頭癌腫病について述べて行きたいと思います。

 

根頭癌腫病のおさらい

 

 バラの根頭癌腫病は、Rhizobium radiobacter リゾビウム・ラジオバクター (旧名 Agrobacterium tumefaciens アグロバクテリウム・ツメファシエンス)というバクテリアによって引き起こされます。この根頭癌腫病を発症させるバクテリア(細菌)は名前が長いので、以下は「癌菌」と呼ぶことにします。

(これはとても立派な癌腫です)

 この癌菌は真正細菌(真正細菌とは、古細菌、真核生物とともに全生物界を三分するうちの一つです。アメーバも…、バラも…、人間も…細胞の中に細胞核を持つ真核生物です)で硝酸菌の仲間です。

 この硝酸菌は、リゾビウム属(シノリゾビウム属を含む)の仲間が45種類ほどあり、その中の根粒菌(マメ科の根と共生、窒素固定菌とも言われます)と親戚関係にあるアグロバクテリウム属9種の内、7種が根頭癌腫病(バラ以外にもブドウやユーカリなど、それぞれ違う癌菌で発病します)、1種が毛根病(メロンの根の病気)の原因菌です。

 これらの癌菌は、2004年時点の研究機関の調査により、畑の土や田んぼの土、井戸水や湖水の中からも発見されているという報告もあり、すでに日本国中に広まっていると言っても過言ではありません。

 この癌菌は、明治時代中期、南アメリカから輸入した桜桃(オウトウ、バラ科サクラ属の果樹、さくらんぼの木)の苗木により日本に入ったという情報もありますが、定かではありません。しかし、明治中期の1890年頃より前から(ちなみに、ハイブリッドティ第一号のラフランスの作出年が1867年です)、欧米では根頭癌腫病の研究が行われていたとの記述が残っているので、本当のことかも知れません。

 根頭癌腫病が全国に広まったことについて少々補足しておきます。

 そもそも日本にはいなかった癌菌ですが、癌菌に冒された苗が数多く流通してしまったがために、全国に広まったことは事実です。平安時代も、戦国時代も、江戸時代も…、日本国民に愛されてきた桜(バラ科)は、癌腫とは無縁でした。しかし、全国のバラが感染するのと同時期から、桜などにも同じ癌菌による癌腫が発生していることからも裏付けられます。

 また、癌腫の苗が数多く流通して、根頭癌腫病が何なのか…、全国のナーセリーさんを含めて誰もが良くわからなかった頃、そして、イモなどと比喩していた頃に…、癌腫ができても枯れないとは言うものの…、多くは枯れたり…、また、気持ち悪がれたり…。その枯れた株や引き抜かれた株は、どうしたでしょうか? 植えていた土はどうしたでしょうか? 

 「そうなんです!」 私も根頭癌腫病について詳しく知らなかった頃は、またその同じ土に植えてしまったり…、鉢の土を庭に捨てたり…、今となっては「何てことをしてしまったのだろう…」と思うことばかりです。

 おそらく、誰しも根頭癌腫病の最適な処理方法を知らず、その残渣や感染している土が雨に打たれ、菌が流れ、河川に入り、また、河川工事などで別の場所に運ばれ、そして、その土を別の場所に…。桜並木と言えば河川添いが多いですし…。

 加えて、靴底に付着した癌菌は、ペタペタと足跡としてあちらこちらへ広がって行きます。肉眼で確認できるようなものではないので、まるで新型コロナウイルスのように広まって行ったのでしょう。(日本国中、マメ科の根粒菌がいない場所が無いように…)

 昔のコンクールでは故意に感染させて、大きな花を咲かせたりもしていたそうですが…、もう少し早く、根頭癌腫病の危険性が世間に広まったならば、ここまで広がることは無かったはずです。ですから、具体的に誰かが悪かった…、と言えるような状況ではありません。ただ、バラ栽培に関わるすべての人が同じような認識の基、これ以上、癌菌を野放しにしないようなアクションが必要です。

 

桜の話が出たので、チョット一息…

 

世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし 

                          (在原業平、古今和歌集)

春の心 のどけしとても何かせむ 絶えて桜のなき世なりせば 

                         (大僧正慈鎭、風雅和歌集)

 

 桜が無くなってしまったら、春は穏やかな心で過ごせます。という和歌に返して、もしも春に咲く桜が無くなっても、別のことに浮かれるでしょう、という和歌です。昔から花が咲く春は特別なものなのです…。

 

感染の仕組み

 

 さて話を戻し、バラがこの癌菌に寄生される仕組みを簡単に説明してみましょう。

まず、癌菌が存在する土の中に苗が植えられると、癌菌は自らの生存や子孫を残すために、苗の根のまわりに集まってきます。これは癌菌が生き延びるために必要なことで、人間がお金を稼ぐために都会に出たり、会社へ通勤するのと同じようなことです。

 そして、苗の根に傷が付くと、苗が出す修復しようとする化学物質(アセトシリンゴン)に反応して傷口から寄生(維管束(道管と師管)から侵入)を始めます。この傷は、出荷のための掘り起こしで根を切られたり、コガネムシの幼虫に根を食べられたりして傷付くと、それが寄生のシグナルです。

 そんな根の傷から寄生した癌菌は、湿度80%以上の場所に癌腫を作ることを好むために、地際のあたり、もしくは、地中の根茎部で正常な細胞に遺伝子の組み換えを行い、癌菌そのものは株内に留まります。

癌菌が留まる場所は、基本的に根が茎に変わる地際(道管と師管が入れ替わるあたり)に留まっており、株の枝の先端部分(花首など)にはほぼいない、と言われていますが、切り花の農家さん達は、一輪の花を切る度にハサミを消毒しています。

 話が変わりますが、現在、いろんな植物で、遺伝子組み換えというのが行われていますが、それらの遺伝子組み換えの多くは、この癌菌が利用されて新品種が生み出されています。

 純粋にバラを栽培している人にとっては、この癌菌は厄介な敵になりますが、遺伝子組み換えを研究している研究者さんたちは、遺伝子導入ベクターとして無くてはならない相棒みたいな存在です。サントリー社が作り出した遺伝子組み換えの「青いバラ」も同様の仕組みです。

 ただ、癌菌は小心者(だと思います…)で生き残らなければならないため、他のウィルス性の病気などは違い、すべてを癌腫にして枯らしてしまうのではなく、一部だけに遺伝組み換えを行います。そして、癌腫を作り出すにしても、自らもその株を生息の場としています。従って、寄生して枯殺してしまうような細菌ではないので、今日でも「共生」しているという学者さんもいるようです。

 また話は変わりますが、欧米の接木苗の場合、接合部を完全に地中に埋めてしまい、いち早く自根を出させるように案内していますが、日本では雑菌におかされないように接合部を埋め込まないようにとの注意書きが記してあります。雑菌とは何でしょう? 日本の土はそんなに危険なのでしょうか? そして、この差は何でしょう…?

 自根と接木の違いについて、また、私の個人的見解は、機会があれば触れることにして、本題に戻ります。

 いずれにしても、このように癌菌がいる土に植えられた場合に発症する確率は極めて高いですが、癌菌が存在しない土に植えても発症することがあります。これは、台木がすでに感染していたり、親木が感染していたりするためです。

 加えて、まだ論文などで発表されてはいませんが、癌菌が種子感染で起こるとしたら大問題です。台木のノイバラやイヌバラ(ヨーロッパで多い)がすでに種子感染していたら…。その種から芽生えた台木はすべて怪しいということになります。

        (四万十川の河原で見つけた、桜色のノイバラです)

 余談ですが、現在、全国の花き園芸市場などで流通し、多くの店頭に出回っている苗は100%発症すると考えて良いでしょう。ホームセンターなどの安価な苗はもちろんのこと、ネットショップの苗、有名どころの抵抗性の台木と言われる苗も少なからず同様です。

 私の畑にある抵抗性台木を使用したと言われ、試しに購入したバラでも、何鉢かは発症しています。また、ローズクリエーターとして評価の高い「バラの家」の木村氏の2022年のブログにも、「… 抵抗性台木を用いるのを取りやめた …」との記事を目にしました。結局のところ、台木そのものが、どんな環境においても(例えば癌菌だらけの劣悪な環境とかでも)癌菌に抵抗できるような性質は持っていない、というのが今日の結論だと考えます。

 これは私の個人的な意見ですが、バラの苗を購入もしくは入手したら、一年間くらいは鉢植えで育てる方が良いと思います。なぜなら、鉢植えで育てる一年の間に、癌菌に侵されている苗の場合には癌腫が発生します。そして、もし、根頭癌腫病が発症した場合には、庭に地植えにはせず、そのまま鉢植えで育てることをお勧めします。感染を広げないために…

 感染する仕組みについては、ネットなどで検索すると、もっと詳しく書かれているところがヒットすると思いますので…。もっと詳しく知りたい方は、そちらでご確認ください。

 

感染されるとどうなるか…

 

 バラがこの癌菌に寄生されると、遺伝子の組み換えをされ、遺伝子組み換えをされた細胞は、オーキシン(植物成長ホルモン)とサイトカイニン(細胞分裂、シュート形成の誘導効果をもつ化合物)を生成し(簡単に言うと異常なほど良く成長する)、腫瘍を作り出します。癌腫を作り出した細胞は、またクローンとして同じ癌腫の細胞を作り出し、これがボコボコとした癌腫として認識されます。英語ではクラウンゴール(Crown gall)と呼ばれます。

 私が今までに見て来た癌腫の中には、大小、色合い、硬い軟らかいなどなど、癌腫と言っても千差万別です。5mm程度の膨らみでも「これはカルス(傷のかさぶた)ではなく、数日後に癌腫になるだろう」との判断も付くようになりました。

 そんな外見上の違いよりも、私が驚いたのは…、癌腫が出来立てのほやほやで、まだ軟らかい状態の時に、ハスモンヨトウ(蛾)の幼虫が新芽やつぼみよりもこの癌腫を好んで食べている姿を何度も目にしています。

  (前出の立派な癌腫をもぎ取ったら、中でハスモンヨトウが食事中でした)

 (小さな癌腫を食べているハスモンヨトウもいました) 

 このハスモンヨトウの幼虫の食害の何が問題かと言うと、おそらく、癌菌は幼虫の体内で消化されずに糞と一緒に排出され、感染を広めているという仮説を立てることができます。これらについても、前述の種子感染と同様に、どこかの大学や研究機関で、糞の成分分析を行ってもらえるとありがたいと思います。

 私自身、いろいろ考えながら日々観察していますが、特に何かを発見したわけではありません…。幼虫のように私も癌腫を食べてみようかと思いましたが…、異種感染(植物から人間に感染…)が無いとは言い切れないし…、ちょっと抵抗感が…。

癌腫の匂いは甘そうではなく、とても青臭かったです…。(匂いはよく嗅いでみました…)

 ちなみに、昆虫の目は人間の目とは構造が違い、ホタルの歌にあるように「こっちの水は甘いぞ…」というのが紫外線反射の独特の感受性により実際に判るそうで、肥料がよく効いている方へと誘われるそうです。

 また話が逸れました。すみません。

 

 

 今回はこれくらいにしたいと思います。

 

 

 次回は癌菌と拮抗する微生物について述べてみようと思います。

 

 

 なおこのブログは私が作っている「根頭癌腫病と戦う微生物入り培養土【商品名】ベストミックス(BEST MIX)」のお知らせブログです。

 最後の清流と呼ばれる四万十川の流れる、高知県の田舎から、全国のバラや桜の未来を案じて…、この培養土を作りました。ご連絡を頂ければ、直接発送も致します。グーグルマップにて「高知県四万十市(しまんとし)秋田(あいだ)」で検索してみて下さい。

 

根頭癌腫病と戦う微生物入り培養土(2024年3月販売開始)

【商品名】ベストミックス、【内容量】14ℓ、【重量】約6kg、【定価】1500円(直販割引等もございます)

【内容物】 バーク堆肥、ココピート、赤玉土、鹿沼土、四万十の土、もみ殻燻炭、パーライト、バーミキュライト、農業用微生物資材、つばき油粕、米ぬか、蟹殻、糖蜜など

※ 一般的な微生物混入培養土より、微生物をたっぷり入れています。庭土や安価な培養土に混ぜても有効です。

 

(注)このブログは、私が製造販売しているバラ用培養土「ベストミックス」のお知らせブログなので、学術論文ではありませんが、大学や研究機関の論文などを参考にしています。