西表島を抱える竹富町では、イリオモテヤマネコを猫エイズ白血病などから守るために、西表島限定で猫条例が施行され、外猫(野良猫、さくらねこ、地域猫、ノネコ、外飼い猫の総称)の捕獲収容が行われてきました。その結果、今年の春には野良猫ゼロを西表島で実現しました。そして、西表モデルを「他の地域に適用できるように」分析が進められているようです。


※コメント頂いたので補足: 西表島での外猫ゼロのプロセスで、殺処分があったか否かの情報を私は見つけられていないので、言及は控えました。

 

https://www.y-mainichi.co.jp/news/38304/

 

 

ところで西表島で先行して施行された猫条例ですが、2022年4月より、竹富町(猫島で有名な竹富島を含む複数の島々で構成)全体に範囲を広げて施行されました。この猫条例や猫の捕獲収容は、元々イリオモテヤマネコなどの希少種を守る目的でした。しかしながら、SFTSなどの人獣感染症から守ることや自然を守る目的のために、西表島限定だった条例が竹富町全体に拡大されたようです。(条例の適用範囲は広がりましたが、捕獲収容を基本とする西表モデルをそのまま竹富町全体に広げるつもりかどうかは不明です)

 

https://seijiyama.jp/article/news/g20210403.html

 

 

西表モデルは、「外猫をゼロにした」という一面をみると、素晴らしいです。その一方、捕獲収容を伴う手法なので、安易に広げてしまえば、殺処分、または無理をして猫を引き出す愛護団体を生み出してしまう、その結果レスキュー型の多頭飼育崩壊が起きる、といった側面もあります。「捕獲しても、全部譲渡すればいい」というご意見は勿論ありますが…問題はそれを、誰が、誰のお金でするのかです。

 

https://ameblo.jp/nerimaneko/entry-12515209879.html?fbclid=IwAR2wBfBcm4cP_VT5rnrEKBF8bnrxPSDPPQh7AXrlgGYpAnAaONnycQYi79Q

 

 

ボランティアが捕獲された猫を保護譲渡するのには、限界があります。元気な子猫でさえ里親探しが難しいのに、捕獲された猫の何割かは、猫エイズ白血病キャリアであったり高齢であったり持病があったり…どうしてもシェルターに溜まってしまいます。

 

ところで、奄美沖縄では世界自然遺産の希少種を守るために多数の猫が捕獲されていますが、近年は殺処分を免れているそうです。しかし、沖縄本島北部では猫の捕獲エリアを広げ、集落近くの野良猫を今後捕獲すること(西表モデル)が検討されています。猫の捕獲エリアが広がれば、殺処分回避を持続できる保証はありません。愛護団体の多頭飼育崩壊が起きるリスクも上がって行きます。西表モデルが適用される地域が広がり、集落近くで捕獲される猫が増えれば増えるだけ、当然ながら殺処分と多頭飼育崩壊のリスクが上がっていきます

 

確かに、殺処分を辞さずに捕獲を進めるのは、自然保護のためには良いかもしれません。一方、人間社会はもっと複雑で、野良猫という存在への人々の想いは複雑です。猫を一日も早く捕獲処分して欲しい人、野良猫に困っているが殺処分は気が引けるという方、地域猫に癒されていて毎日猫に挨拶するのが生きがいという方など…さまざまです。

 

更には、世話をしていたさくらねこ、地域猫が殺処分前提で捕獲されれば、お世話をしていた方は、無理して引き出すかもしれません。地域猫さくらねこは、野良猫に避妊去勢をして、一代限りの命として見守る取り組みですが…こういった取り組みがある背景には、殺処分を回避したいものの、野良猫が多すぎて、保護譲渡には限界があることがあります。こういった取り組みの背景からすると、無理して捕獲された野良猫を保護した先には、多頭飼育崩壊のリスクが増大することは否定できません。

 

こういった副作用を考慮して、人間社会、民意、自然保護…全てを包括して、西表モデルの適用範囲を広げるべきか、どこまで広げるべきか、又はどういった修正を加えていくべきか、の議論を国民、住民で深めていくことを希望します。