沖縄本島北部、奄美、徳之島などの猫条例(希少種保護のための猫の捕獲問題)についてご紹介します。この紹介にあたり、上記条例制定のアドバイスをされている、諸坂佐利准教授の記事を2つほどご紹介します。これらを知ることが、沖縄奄美のネコ条例の制定の意図や、今後日本中の外猫をどうやって減らして行くのかを考える上で重要と思い、ご紹介させていただくこととしました。

 

『いわゆる「ネコ問題」に対する法解釈学的及び法政策学的挑戦 』国立動物園をつくる会 HPより

https://kokuritsudoubutsuen.or.jp/morosakasLaw/neko2.html

 

 

 

【猫の即殺処分ができないことを問題視】

こちらの資料によると、日本の動物愛護法が、希少種保護のために猫を排除をするにあたる障壁となっていると言及しています。ところで、野生化した猫(ノネコ)は狩猟鳥獣のため、鳥獣保護法により申請すれば捕獲可能です。しかしながら、飼い猫、野良猫(愛護動物)とノネコ(狩猟鳥獣)は同じ種の動物(猫)です。したがって、飼い猫や野良猫(愛護動物)をノネコ(狩猟鳥獣)と間違って捕獲した場合に備え、愛護法に配慮してノネコを捕獲しないといけないため、捕獲猫の飼い主確認等のプロセスが必要となります。したがって、他の外来種と異なり、猫を捕獲後に即殺処分できないことを問題視しています。

 

一方でドイツなどでは、民家から数百メートル離れたエリアに徘徊する野良猫は、生態系保護の観点から、即殺処分できることを紹介しています。

 

【猫を年中捕獲殺処分するための法律がない】

さらには、猫を年中、捕獲殺処分できる規定を持った法律が現状ないことを問題提起しています。

 

鳥獣保護法に基づけば、申請すれば狩猟期間中はノネコを捕獲することが可能です。逆に言うと、狩猟期間でないときはノネコの捕獲ができません。

 

狂犬病予防法は、主に犬を想定した法律になり、これを根拠に外猫の捕獲はしていません

 

こういった背景から、一年を通しての猫の捕獲が難しいことや即殺処分ができないことを、希少種保護の観点から問題視しています。

 

【ネコ条例の内容】

この解決策として、猫の捕獲・排除、猫の飼養登録、室内飼育をさせる条例を沖縄本島北部、奄美、徳之島、西表などでは制定しています。これらの条例は、動物愛護だけではなく、自然環境、生態系の保全を目的としているとしています。諸坂准教授は、この条例制定へのアドバイスをされたそうです。

 

まず、猫の飼養登録制度(マイクロチップや、飼養登録の義務化)を導入しています。これは、猫の飼い主の有無を明文化する意図があるそうです。

 

奄美では自然生態系保護への飼い主の責任を明文化させ、責任を果たさなければ、過料の発生もするそうです。

 

またこれらの条例では、猫への「みだりな餌やり」を禁止しています。この「みだり」の解釈は難しいのですが、この判断は行政に委ねられるものであり、住民にはその判断権はないとしています。また諸坂准教授の考えとしては、「餌やりや全面禁止が望ましい」としています

 

更には飼い主不明猫の捕獲収容の権限を行政に与え、捕獲の業務委託についても規定しています。

 

捕獲猫の飼い主への返還や譲受人への譲渡については、事業にかかった費用の負担を飼い主や譲受人にさせる規定を設けています。

 

【保護譲渡、TNR、地域猫活動について】

更には、収容された猫の保護譲渡には経費がかかるため、費用対効果という面で懐疑的だと記述されています。

 

また、環境省が現在推進している地域猫活動という取り組みについても、懐疑的だとしています。これは、猫が媒介する人獣感染症の予防や在来種捕食問題の解決にはTNRや地域猫活動では効果がないため(猫は数年生き続けるため)だそうです。また、奄美などでのTNRや地域猫活動は有効でないとしています。

 

では次に、諸坂准教授の資料をもう一つご紹介します。

 

希少種・絶滅危惧種保護政策における「ネコ問題」 

国立動物園をつくる会 HPより

https://kokuritsudoubutsuen.or.jp/morosakasLaw/neko.html

 

 

 

【ノネコ、野良猫、飼い猫の分類】

諸坂先生は、希少種保護の観点から動物愛護法を改正し、マイクロチップ、首輪、室内飼養を義務化し、飼い猫とその他の猫に分類するべきとしています。さらに、飼い主のいる猫は動物愛護法で守られる飼い猫とし、その他の猫(飼い主のいない猫や飼い主不明猫)は狩猟鳥獣であるノネコと「みなす」ことを提言しています

 

ところで、この提言の背景に、現在多くの自治体で猫の捕獲殺処分を行わない理由の一つがあります。この理由には、飼い猫と飼い主のいない猫の境界が曖昧であり、誤って飼い猫を捕獲殺処分した場合、器物損壊罪などの罪に問われるリスクがあるということがあります。

 

【今後の猫問題の展望】

これらから、動物愛護の活動家と、自然保護の観点の専門家の間は、ともに外猫ゼロと自然保護の必要性という認識は共有している一方、それを達成する方法について、価値観の大きな溝があることがわかります。

 

自然保護の方も動物愛護の方も、猫の適正飼養や首輪やマイクロチップ装着によって外猫を減らすことには賛成だと思います。また自然保護や生態系保護についても、両者は賛成していると思います。

 

両者の溝は…自然保護側では、一刻も早く迅速に、殺処分を辞さずに猫の排除を行いたいと考えています。一方、動物愛護側としては、保護譲渡、TNR地域猫活動を駆使することで、できる限り猫の命の犠牲を少なくして、自然保護をしていきたい考えなのです。

 

この溝はどのようにして埋めていくことができるのでしょうか…

 

ところで…奄美沖縄北部などと同様の条例を制定する地域が増えていけば…動物愛護法が改正され、飼い主不明猫は全てノネコと全国的にみなされれば…捕獲収容によって全国的な外猫の排除の計画が実行されることになるかもしれません。この問題(捕獲収容か、TNRか)は、奄美沖縄に限らず、全国的な問題に広がっていく可能性があります。

 

捕獲収容で殺処分を辞さずに外猫を減らすべきか、地域猫活動やTNRで外猫を減らして行くべきか…

本ブログが、一人一人、ご意見を持っていただくきっかけ、参考になれば幸いです。

 

最後に、地域猫TNR賛成派の方向けの署名情報があるので添付します。↓

「どうぶつ基金」さんより、沖縄や奄美での猫の捕獲収容について反対する署名運動、

change.orgより↓