(♯11からの続き続き続き)
とくに大きいわけでもなく小さいわけでもなく、豪華なわけでもなく見窄らしいわけでもない、どこからどう見てもごく普通の、ごく一般的な民家。ひとつだけ違うところがあるとすれば、それはその家の玄関付近におびただしい数のスニーカー・革靴・ハイヒール・長靴・下駄・雪駄・キキとララが描かれたビーチサンダル・わらじ等が散乱していたということで、その状況から類推/推察するに、この家には今晩、多くの人たちが集っているのだろう。
しかし、こんなところでいったい何をしているのだろうか。ひょっとして宴会でもやってるのかしらん。先輩のうしろにくっついて、俺、よたよたと家のなかに入ってった。
廊下のいちばん奥にある、障子と襖をリミックスしたような、いかにも立て付けが悪そうな間仕切りを、ずずずず、横にスライドさせると、二十畳ほどある畳敷きの部屋のなかでものすごい数の人たちが御座布団におっちんしながら数名ずつ輪になって和になって談笑/歓談している姿、そして部屋の奥に鎮座ましましているちょっと大きめで派手めの仏壇のようなものが一気に目に飛び込んできた。
おっちんしている大半は大人だが、小学校低学年ぐらいと思しきおぼこたちも何人かいて、それらおぼこたちは親のひざの上に座って眠たそうに気怠そうに目をこすっている。
「あ、滝ちゃん。この前はありがとね。今日はご苦労さま」
なんていいながら、どこぞのハゲ親爺が我が憧れの先輩ににじり寄ってきた。
それからも先輩はいろんな人たちと挨拶を交わし、なにもやることのなかった己は、これって何の集会なのかなあ、なんて薄ぼんやり考えながら部屋の隅っこに座って虚空を見つめていたのだけれども、それから数分後、事態は急展開を迎えることとなる。
(♯13へ続く続く続く)